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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.285

言葉の通じない海外で突然逮捕されたらどうなる!? ある女囚の叫び『マルティニークからの祈り』

martinique-movie02.jpg「ママはちょっとお出かけしてくるから、いい子にしててね」と軽い気持ちで娘と別れたジョンヨン(チョン・ドヨン)。まさか刑務所送りになるとは。

 チャン・ミジョン事件を取材した新聞記事、さらにドキュメンタリー番組『追跡!60分』を見て、映画化に動いたのはパン・ウンジン監督。『受取人不明』(01)などキム・ギドク作品で印象的な演技を見せていた元女優だ。アラン・パーカー監督の実録獄中記『ミッドナイト・エクスプレス』(78)同様のリアリティーに、女囚もののお約束ともいえるレズビアン看守によるヒロインの貞操危機シーンなども盛り込み、緊張感と娯楽性に溢れた社会派作品に仕上げている。裁判に必要な書類を紛失するなど大使館員たちの杜撰な対応がヒロインを苦境に追い込むが、このエピソードは事実らしい。ウンジン監督に事件の内情について聞いてみた。

「映画なのでキャラクターは多少戯化してはいますが、事件に関するエピソードは事実に基づいたものです。大使館員はチャン・ミジョンさんに『フランスでは麻薬に関わる事件は重罪。10~20年、中には100年の罪になることもある』と無責任な言葉を残して帰っています。『マルティニーク島には朝鮮語を話せる人間は誰もいない』という発言も実際に大使館員がしたものです。インターネットでこの事件のことを知った韓国人が『それはおかしい。私の親戚がいます』と名乗り出たことで、ミジョンさんはようやく通訳を得て、窮地を脱することができたんです。この事件のことを知らなかった人は韓国でも意外と多く、映画化をきっかけで事件の内容が広まりました。韓国の外交部(外務省)はこの映画のことを面白く思っていないようですね(苦笑)。フランスやドミニカ共和国でもロケ撮影してますが、外交部の無言の圧力を感じることがありました。多分、私は目をつけられていると思います(笑)。もし外交部が映画の公開に干渉してきた場合は、ノイズマーケティングで対抗してやるくらいの覚悟でした。こちらには実話なんだという強みがありましたから。でも、これは韓国だけに限った事件ではないと思うんです。日本をはじめどの国でも、海外で罪に問われて収監されたままの人たちは少なくないはず。なのに彼らが存在することは、母国の人たちにはほとんど知らされていない。こんな事件がもう起きてほしくないという願いから、この映画は完成させたんです」

 ホテトル嬢連続拉致殺害事件を題材にした『チェイサー』(08)、障害児童の性的虐待を扱った『トガニ 幼き瞳の告発』(11)、幼女暴行事件と裁判の行方を描いた『ソウォン/願い』(現在公開中)など韓国映画は実録サスペンス、実録犯罪もののレベルが非常に高い。東野圭吾のベストセラー小説の映画化『容疑者X 天才数学者のアリバイ』(12)を撮るなど、日本文化に理解のあるウンジン監督は韓国映画界についてこう語った。

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