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週刊誌スクープ大賞

朝日新聞を打ち負かした週刊誌に、元名物編集長が苦言「他山の石として襟を正せよ」

 一部週刊誌で、朝日問題を取り上げないと批判された古舘伊知郎の『報道ステーション』だが、この日は従軍慰安婦問題の吉田証言について長時間の検証をしていたのは、見応えがあった。

 河野談話に対して吉田証言がどれほどの影響を与えたのかという点が中心だったが、古舘が「談話は吉田証言を根拠にして作製されたものではない。いろいろな形での強制性はあったと考える」と強調していたところに、古舘の意気込みが感じられた。

 この検証の中で一番感心したのは、この河野談話作製に大きく関わった石原信雄氏(元官房副長官)のブレない発言だった。安倍首相ら右派連中が石原氏の証言の都合のいいところをつまみ食いして、河野談話見直しを声高に言っているが、石原氏はハッキリこう言っている。

 「河野談話作成の過程で吉田証言を根拠にして強制性を認定したものではない」「慰安所の設置や運営に軍が深く関わっていたことは事実」「慰安婦たちの聞き取り調査などによって強制性はあったと認めた」などなど。

 これによって、河野談話は吉田証言などハナから信用していなかったこと、従軍慰安婦に軍が深く関与していたこと、多くの資料や聞き取り調査で「強制性」があったと認めていたことが歴史的証言として定着したのだ。

 安倍首相は朝日新聞の誤りをあげつらうのではなく、河野談話の精神を引き継ぎ、日本の過去を謙虚に反省して日韓関係の次なる未来をつくろうと朴槿恵大統領に申し入れる“大人の対応”を取るべきある。今度は安倍首相の器が問われることになる。

 今回は週刊誌の「完勝」となったが、誤報問題でいえば、週刊誌も朝日新聞のことを大声で批判できるほど身ぎれいではない。

 週刊誌も誤報の“宝庫”である。新潮は朝日新聞襲撃事件犯人の告白の大誤報について、いまだにほとんど説明らしき説明をしていないこと、読者は忘れてはいない。

 現代は、先日直木賞作家になった黒川博行氏への名誉毀損問題を忘れてはいまいな。黒川氏は、現代の岩瀬達哉氏の連載でグリコ・森永事件の真犯人ではないかと書かたことで、講談社などを名誉毀損とプライバシー侵害で訴えた。

 Wikipediaの記載なので自信は持てないが、「2013年8月30日、東京地裁は講談社と当時の編集長、および執筆者の岩瀬達哉に、計583万円の支払いを命じた」とあるから、敗訴したのであろう。現代が誌上でそのことについて読者に詫びたという記憶がないが、どうしたのか。

 朝日新聞の迷走を見るに付け、メディアの信用は地に堕ちていると思わざるを得ない。「メディアは信用できない」という空気が日本中を覆っている。佐村河内守氏を「現代のベートーベン」と持ち上げ、STAP細胞で小保方晴子氏をノーベル賞候補と騒ぎ立て、お先棒を担いだのはメディアである。彼ら彼女たちが「偽物」だとわかった瞬間から、自分たちの非をまったく省みず、人間のくずのように非難し、追い回す。

 私もこの欄で何度か、世の中の正義ヅラした人間の仮面をはぎ取る週刊誌の役割に喝采を送ったことがある。だが、週刊誌を含めたメディアが取材して暴けるのは、その人間の一部にしか過ぎないのだ。自分が全能の神になったごとく大声でその人間を非難するのではなく、常に、もしかしたら自分たちは過ちを冒しているのかもしれないという懐疑の心を持ちながら、記事にするということを忘れてはなるまい。

 朝日新聞“事件”は後々まで語り継がれる大誤報ではあろうが、私も含めて、これを他山の石としてメディアに携わる人間は襟を正す、いい機会とするべきであろう。
(文=元木昌彦)

最終更新:2014/09/22 19:01
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