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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.288

天才・楳図かずお19年ぶりとなる最新作『マザー』。家族に対する“罪悪感”がモンスター化する恐怖!

mother_umezu03.jpg楳図(片岡愛之助)は締め切りに追われ、母・イチエ(真行寺君枝)をかまってやることができない。やがて心の中の罪悪感が具象化していくことに。

 監督デビュー作を自身の膨大な数になる原作群の中から選ばずに、自身を題材にしたオリジナルストーリーを書き下ろしたわけだが、これには“ある含み”もある。楳図先生のいちばんの代表作といえば『漂流教室』だが、大林宣彦監督の映画版(87年)もフジテレビでのテレビドラマ版(02年)も楳図作品の壮大すぎるスケール観と豊潤なイマジネーションを消化できないまま中途半端に終わってしまった。『わたしは真悟』や『14歳』にいたってはまだ一度も映像化されていない。楳図作品のエッセンスさえきちんと汲み取ってくれれば、もっと自由奔放に映像化してもかまわない。自分がこれまでに発表した作品を映画ならではのスケール観のあるものとして蘇らせてほしい。楳図作品の生みの親/マザーである楳図先生から、世界中の映像クリエイターたちへ向けたそんなメッセージも込められている。

 『パンズ・ラビリンス』(06)のギレルモ・デル・トロ監督、『スノーピアサー』(13)のポン・ジュノ監督あたりが『漂流教室』の実写化に手を挙げれば、かなり期待できるではないか。「心の中で念じたことは、いつか叶う」。楳図先生のそんな教えが頭をよぎる。
(文=長野辰次)

mother_umezu04.jpg

『マザー』
原案・脚本・監督/楳図かずお 脚本/継田淳 主題歌/中川翔子「chocolat chaud」 出演/片岡愛之助、舞羽美海、中川翔子、真行寺君枝 配給/松竹メディア事業部 9月27日(土)より新宿ピカデリーほか全国公開
(c)2014「マザー」製作委員会
http://mother-movie.jp

最終更新:2014/09/19 21:00
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