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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.289

動物虐待防止協会が煽ったカンガルー大虐殺映画!!『荒野の千鳥足』が43年の歳月を経て日本初公開

chidoriashi03.jpg意を決してヤバの町から出ていこうとするジョン。だが、何度も試みても、なぜか振り出しに戻ってしまう。あぁ、ビールが怖い!

 『荒野の千鳥足』だけでも充分ふらふらになる怪作だが、《日本初公開!世界のどす黒い危険な映画》第二弾と称して、続いて公開されるのは1979年にイギリスで製作・公開された『SCUM/スカム』。イギリスの少年院を舞台にした『スカム』はもともとBBCで放送されるTVムービーとして作られたものだが、暴力表現と反体制的な内容から、放送禁止の憂き目に。そこで同じ脚本、ほぼ同じキャストで劇場映画としてセルフリメイクされた。「スカム(屑)」と呼ばれる不良少年たちを更生させるための施設である少年院だが、カーリン(レイ・ウィンストン)ら新入りの少年たちは院内の陰湿なイジメや指導官たちの無理解と虐待によって、残されていた人間性まで木っ端みじんに破壊されてしまう。

 『荒野の千鳥足』と『スカム』、2本続けて見て思うのは、人間は環境に簡単に染まってしまうということだ。『荒野の千鳥足』はオーストラリアの大平原、『スカム』はイギリスの少年院と状況はまるで違うが、理性でいくら抗ってみても、体は無意識のうちに環境に溶け込もうとする。生き延びるための自然の摂理なのだろう。『荒野の千鳥足』も『スカム』も人間の動物的な一面をまざまざと描いてみせる。両作とも製作からかなりの時間が経過しているが、人間の本質は30~40年程度では大して変わらない。ヤコペッティの『世界残酷物語』の原題が、「MONDO CANE(犬の生活)」だったことを思い出した。
(文=長野辰次)

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『荒野の千鳥足』
原作/ケネス・ブック 監督/テッド・コッチェフ 出演/ゲーリー・ボンド、ドナルド・プレザンス、チップス・ラファティ、ジャック・トンプソン 配給/キングレコード R−15 9月27日(土)より新宿シネマカリテほかにてレイトショー ※シネマカリテでの初日には、通常料金でのビール飲み放題イベントあり。
(c)2012 Wake In Fright Trust.All Rights Reserved.
https://www.facebook.com/chidoriashi.jp

『SCUM/スカム』
原案・脚本/ロイ・ミントン 
監督/アラン・クラーク 出演/レイ・ウィンストン、ミック・フォード、ジュリアン・ファース、ジョン・ブランデル、フィル・ダニエルズ 配給/キングレコード R-15 10月11日(土)より新宿シネマカリテにてレイトショー
https://www.facebook.com/scum.jp

最終更新:2014/09/25 14:00
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