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久石譲、エンタテインメントとクラシックの未来を語る「人に聴いてもらうことは何より大事」

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「モーツァルトだってハイドンだって、発注があってしか書いてない」

――今年3月に、今作のジャケットも手がけたデザイナー・吉岡徳仁さんとの対談番組(Eテレ『SWITCH』)があり、「発注がある仕事」の楽しさ、難しさについてのお話がとても印象的でした。

久石:彼はデザイナーだから、基本的には商業ベースでつくることになります。ただ吉岡さんにも自分のやりたいことがあるし、自分のつくりたいものと発注されるものは違うので、ある種の葛藤は持っています。そこの共通項ありましたね。

――どういった葛藤ですか?

久石:アーティストというのは、モーツァルトだってハイドンだって、発注があってしか書いていないんです。発注なしで作っていたのは、シューベルトとプーランクくらいじゃないかな。「浮かんだら書く」なんてそんな呑気な話はありません(笑)。

 依頼は、作品をつくる手がかりにもなります。「お金がない」と言われたらオーケストラではなく小編成にするし、「アクション映画だ」と言われたらラブロマンスみたいな曲を書くわけにはいかない。このように、どんどん限定されていきますよね。そういった制約は決してネガティブなことではなく、「何を書かなければいけないか」ということがより鮮明に見えてくるだけなので、僕は気にしていません。

 大事なのは、映画のために書いているふりをして、実は本当に映画のためだけではないこと。つまり、自分がいま書きたいものと発注をすりあわせていくんです。アーティストが書きたいと思っているものでなければ、人は喜んでくれない。いま自分が良いなと思っている音楽の在り方――それは幅広いジャンルにあるので、その中で、いま発注の来ている仕事と自分の良いと思うものとを照らし合わせるんです。

――それはご自身が30年以上このお仕事される身につけていったマナーですか。それとも、最初からお持ちの考えなのでしょうか。

久石:どうなんでしょう。その都度、一生懸命やっていることは確かで、基本的にはそういう姿勢です。頭で考えてスムーズにいく仕事はひとつもないので、毎回ああだ、こうだとやっていますよ。

――先の対談でもう一つ印象的だったのは、久石さんの「音楽をつくるには論理的でなければいけない」という趣旨の発言です。

久石:感性に頼って書く人間はダメですね。2~3年は書けるかもしれないけれど、何十年もそれで走っていくわけにはいきません。自分が感覚だと思っているものの95%くらいは、言葉で解明できるものなんです。最後の5%に行き着いたら、はじめて感覚や感性を使っていい。しかし、いまは多くの人が出だしから感覚や感性が大事だという。それだけでやっているのは、僕に言わせると甘い。ムードでつくるのでなく、極力自分が生みだすものを客観視するために、物事を論理的に見る必要があります。

――面白いですね。ご自身の中では、自らの音楽を解析していくプロセスは常に踏んでいると。

久石:そうですね。とはいえ、言葉で説明できる段階というのは、まだ作曲にならないんです。無意識のところまでいかないと、作品化するのは難しい。ある程度はつくっているけどピンと来ない、ほぼできているけど納得できない…というものが、一音変えただけでこれだ!という曲もあるし、どこまでやっても上手くいかないから、ゼロからもう一度、という場合もある。「残りの5%」のような解明できないところ、つまり無意識の領域にまでいかないと、作品にするのは難しいです。

――発表されている曲は、すべてそういうプロセスを経ていると。

久石:そういうことになります。

――久石さんのキャリアを振り返ると、ミニマル・ミュージックや現代音楽分野での創作活動を経て、ポピュラリティのある映画音楽の世界で広く活躍されてきました。二十世紀の実験音楽へのご関心は、今も継続して持っておられるのでしょうか。

久石:ミニマル・ミュージック以降の、ポストミニマルやポストクラシカルなどのジャンルでいうと、自分はポストクラシカルの位置にいると認識しています。そういう作品はいまも書き続けていくべきだと考えているし、力を注いでいる部分でもあります。現在つくっている音楽も、やはりベーシックはすべてミニマルです。それの発展系ですね。

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