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お笑い評論家・ラリー遠田の『キングオブコント2014』評──シソンヌが魅せた“コントの最先端”

 このネタが終わった時点で、なかば勝負は決した。シソンヌのネタが終わり、優勝を争っていた暫定王者のチョコレートプラネットにカメラが向けられると、彼らは完全に負けを認めたような、あきらめの笑みを浮かべていた。

 シソンヌの1本目のコントも圧巻だった。街でたまに見かけるような、ある種の「厄介」なタイプの人間が登場する。ギャンブル中毒の男性がラーメン屋に押しかけ、パチンコで負けたとグチをこぼし、「くせえラーメン」を食わせろと暴言を吐く。地の底を這うようなひどいキャラクターだ。でも、細部に不思議なリアリティーが宿っている。だから、思わずこの人物に釘付けになってしまう。確かにどうしようもなくひどいけれど、その先にあるもっとひどいものが見たい。そう思わせてくれる。

 シソンヌのコントには「笑わせよう、笑わせよう」と待ち構えている感じが一切ない。日常的な設定の中に、いつのまにか引きずり込まれている。グイッと引き込む力が強い。その力の源を分析してみると、演技力、ネタの構成力、キャラの作り込み具合、といった要素が浮かび上がってくるのだろう。

 コントは漫才よりも自由度が高い。衣装も小道具も、照明も設定も自由だ。だからこそ、得体が知れない部分もある。コントを見る側は、熱に浮かされるのではなく、技で魅了される。

 シソンヌのコントには、2014年時点でのお笑い界の最先端の「技」がギッシリ詰まっていた。決勝10組に面白くない芸人は1組もいない。ただ、大会全体を振り返ってみれば、なるべくしてなった王者、という感じがする。2本目のコントの冒頭、たった一言で会場を揺らしたシソンヌには、すでに王者の風格が漂っていたのだ。
(文=お笑い評論家・ラリー遠田)

最終更新:2022/12/21 18:04
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