日刊サイゾー トップ > 連載・コラム  > 「毎日どこかで歌っていたい」【岩男潤子】タイムリミットだった23歳の夜
宍戸留美×小明×Voice Artist【声優 on FINDER!】vol.29

「毎日どこかで歌っていたい」【岩男潤子】タイムリミットだった23歳の夜

IMG_8309.jpg

――今後、ライブをしてみたい国はありますか?

岩男 フランスと台湾には、どちらも2年連続で行くことができたので、来年も……と思っています、フフフ。ジャパン・エキスポで歌っているときは、スペインの方が「スペインにも来てください」って言ってくださったり、台湾に行ったときは、「香港、中国にも来てください」って言ってくださって。

――香港、中国の方は、岩男さんのライブのために台湾まで行ってたってことですね? すごい!

岩男 フランスでも、「アメリカにも来てほしい」とかありますし、みなさん、そういって声をかけてくださるので、いろんなところに行きたいです。

――ワールドワイド! こんなに活動の幅が広がると思っていましたか? まさかスケジュール帳に、四ッ谷とか飯田橋とかキオスクとかじゃなく、フランスと台湾と書くなんて!

岩男 思っていなかったですね。そういえば、『モンタナ』が決まったときに、両親から「日本でとどまってはダメなんだ、もっと視野を広げて世界中の人に潤いを与えてあげるような人にならなくちゃ。責任重大な使命をもって親元を離れたんだから、ちょっとやそっとのことで負けてはいけない」ってことを言われて、だから、それが自分のある意味スタート地点になって……。その時に世界を目指そうとは思っていましたけど、まさかこんなに早く叶うなんて!

――だから潤子って名前なんですかね、どこまでも素敵なご両親(涙)! 国内の活動では、コミケにも参戦しているとのことですが、それはまたどういった流れで?

岩男 コミケを薦めてくださったのも田中公平さんさんなんです(笑)。公平さんと、現在の私の音楽活動のプロデューサーの川村竜さんという方。川村さんは、国際コンテストのコントラバスで優勝された方で、今、公平さんや中川翔子ちゃんのバンドマスターもされているんですけど、そんなお二人の薦めだったら……。

――乗るしかないですね! どんな作品を作ってるんですか?

岩男 「一人でも多くの方に声を知ってもらわなくちゃいけない」と思って、普段はバラード中心の真面目な歌を歌っていることが多いので、コミケではうんと弾けて、普段見せない、聞かせていない声で、ドラマCDにしました。フフフ。お笑いたっぷりの弾けたドラマCDを3作作って、夏、冬、夏と参加して、また冬が抽選で決まれば、参加したいな!

――自分で手売りしているんですか? ストーカー被害にも遭われましたし、危険はないんでしょうか?

岩男 ……? 今まで心配したことがなかったです。危険も全然ないですし、みなさん本当にそれこそ20年前のソロコンサートのころから、ライブ会場の人が驚くぐらいマナーがよくて、「整列してください」って言ったらすぐに並んでくれますし、会場の方にも「帰るときにチリひとつ落ちていない」「岩男潤子さんのファンの方は本当にマナーがよくて、感動しました」ってよくファンの方を褒められるんですよ。

――すごい! 何か特殊な訓練でもしているんですか?

岩男 何もしていないんですけど、優しい方が集まってくれて、みんなのおかげで10年、20年を迎えられるし、本当にいい仲間に支えられています。

――マナーが残念なアイドルファンは全員岩男潤子ライブで修行を積むべき! ちなみに、新しいアルバム『voice』には、どういった曲が入っているんですか?

岩男 私が『KEY THE METAL IDOL』というアニメに出演させていただいたときに「手のひらの宇宙」という、ファンの方が合唱できるぐらい覚えてきてくれる歌を作ってくれた濵田理恵さんと寺嶋民哉さんのコンビにお願いした『voice』というタイトル曲から始まり、カードキャプターさくらの音楽が大好きで、その音楽を担当されていた根岸貴幸さんにお願いしたり、大好きなシンガーソングライター相曽晴日さんでしたり、私の初めて作った歌に作詞を付けてくれた森由里子さんでしたり、もちろん田中公平さんの曲でしたり、この20年間を、力強くサポートしてくれた皆さまに、「おかげさまで20年目を迎えることができました」というご報告とともにお願いした楽曲ばかりです。

――売れ行きのほうはどうですか?

岩男 おかげさまで、初回プレスが完売しまして、それで、11月24日に、関内にあるアプローズというホールコンサートが決まったんです。ここで、初回プレス完売祝いで、みなさんにおめでとうを言ってもらえたらうれしいなと思って。

――完売おめでとうございます! しかしながら、声優業に歌手業のツアーにキャンペーンに、本当に忙しいですね……!

岩男 もっと忙しくしたいぐらい。毎日どこかで歌っていたいです(笑)。

――そんな岩男さんですが、今までで引退を考えたことはありますか?

岩男 23歳以降は、本当にたくさんの仕事をさせていただいて、充実はしていたんですけど、結婚もして、10年間は結婚しながらお仕事をさせていただいていたんですけど、その後、まさかの離婚も経験することになって……そこからのダメージが体にきてしまって、離婚した翌年に倒れてしまったんですね。精神的なものというより、過労でしたね、完全に。耳の病気になって、ウィルスが脳に近いところに溜まってしまって、後頭部にすごい痛みが走ったんですよ。病院に行ったら「即手術」ということで、鼓膜からチューブを入れて膿を吸い出して……。「耳は聞こえなくなるだろうし、もしかしたら歩けなくなるかもしれない」って言われたんです。

――声優・歌手の命の耳が……!

岩男 その手術の後は、顔面全体に痛みが広がって、手術の方法によっては亡くなる方もいると聞いて、手術をしていいのか迷うぐらいだったんですけど、実際は迷うヒマもないままに麻酔を打って即手術だったので、カチャカチャという音と、膿を吸い取られる気持ち悪さが、術後もずっと離れないのが辛かったです。手術後に車いす生活になって、そのときに「終わってしまった……」と思いました。「まだ終わりたくないのに、これが引退のときなのか」って。歩行困難で、何カ月も続くリハビリが苦しかった。川村竜さんとコンサートをした翌々月の手術だったんですけど、腫れたすごい顔を誰にも見られたくなくて、メンバーには誰にも知らせませんでした。あのときは、初めて母も「もう、帰ってくる?」って言ったぐらい。

――そういう状況で、鬱になりませんでしたか?

岩男 そのときはね、「鬱病にならないように」っていうお薬も飲んでいて、それでも、なんかこう、「こんな人生だったら、ないほうがマシなんじゃないか」って思い始めたときもあって。でも、本当は鬱になりたくないって気持ちもあるから、本棚には『鬱にならない方法』とか『前向きに生きる方法』とか、そういう本がたくさんあって(笑)。それってもう実際は鬱病だったと思うんですけど、当時はそういうタイトルを見て励まされていたのかな。ファンの方から、「カードキャプターさくらの知世ちゃんの声は、もう聞こえないんですか?」とか、「知世ちゃんの歌は聴けないんですか?」っていうお便りが届いても、もう、音も楽器も錆びて聞こえるぐらいだったんですよ。テレビも見たくないぐらい、なんの音も聞きたくなかった。そんなときにパソコンから、自分が歌った『カードキャプターさくら』の大道寺知世の歌が聴こえてきて、そこでやっと「がんばろう」って思えたんですよね。だから、アニメに救われて、アニメに支えられて、一歩踏み出せたというか……。今も、耳にチューブが入っているんですけど、聞こえなくなるって言われた耳も聞こえるようになったし、歩けるようにもなった。だから、同じ病気で苦しんでる人がいたら、あきらめないでって伝えたいです。

――想像を遙かにこえる壮絶さでした……。そんなことがあっても捻くれずに明るくて優しさを保てる岩男さんはどこまでも偉大です! 今後の野望があれば、是非教えてください!

岩男 昔から、声を嫌われていじめに遭っていたんですが、今は、そういういじめを苦に幼い人たちが命を絶ってしまったり、夢をあきらめてしまったりするでしょう? そういう人たちに、「自分もそういうときがあったけど、大丈夫でした!」って言いたいなって。ライブとか、イベントとか、握手会で、少しでも「目指しているんです」って言ってくれたら、「あきらめないでがんばって!」って直接言ってあげたい。自分の経験を通じて、希望と言っては大げさですけど、それを与えてあげられるような人になりたいですね。

――まさに聖母……! どうもありがとうございました!
(取材・文=小明)

●いわお・じゅんこ
大分県別府市出身。『カードキャプターさくら』(大道寺知世)、『新世紀エヴァンゲリオン』(洞木ヒカリ)、『魔法少女まどか☆マギカ』(早乙女和子)など、新旧問わず話題作に出演し、今年声優活動20周年を迎えた。
2009年よりプロデューサーにベーシスト川村竜を迎え、前作「やさしさの種子(たね)」などを発表。パリで開催されるジャパンエキスポ出演や、今年2月には2度目の台湾単独ライブを行うなど、国内外に於いて、さらなる飛躍を誓い活動中。

『岩男潤子20th Anniversary -voice- in 横浜』
11月24日(月・祝)関内/アプローズ
“ voice 初回プレス完売記念ライブ”

開場17:00 開演17:30 終演予定 20:00
出演:岩男潤子(Vo)川村竜(b)鈴木直人(gt)真部裕(vln)成田祐一(p)
齋藤たかし(d)

*チケット¥5,500(当日¥6,000 ・ 全席自由)
*学生:前売り当日共¥5,000
*イープラスにてお求めいただけます
*本公演はドリンク・フード等ございません
*会場:アプローズ
*住所:横浜市中区太田町2-23 横浜メディアビジネスセンター1F

『岩男潤子20th Anniversary -voice- in 京都』
12月13・14日(土・日)京都/都雅都雅TOGATOGA

■12月13(土) 【heal for people vol.80】
開場13:30 開演14:00 終演予定16:30
出演:岩男潤子(Vo) 川村 竜(B) 熊谷ヤスマサ(P) 鈴木直人(G)

■12月13日(土) 【岩男潤子トークライブ in TOGATOGA】
開場18:00 開演18:30 終演予定20:30
出演:岩男潤子・川村 竜
*チケット¥4,000(当日¥4,500・全席自由・ドリンク別)

■12月14日(日) 【heal for people vol.81】
開場13:00 開演13:30 終演予定16:00
出演:岩男潤子(Vo) 川村 竜(B) 熊谷ヤスマサ(P) 鈴木直人(G)

*チケット(13日昼及び14日)¥4,800(当日¥5,300・全席自由・ドリンク別)
*整理番号順入場(FC優先入場)
*住所:京都市下京区寺町通四条下ル貞安前之町639 B1
*各プレイガイドにてお求めいただけます。
*学生証ご持参の方、各500円割引いたします。

●ししど・るみ
1973年、福岡県生まれ。1990年にアイドルデビュー、18歳でフリーアイドルになり現在まで様々な分野で活動中! フランス、ドイツ等でもライブを行い音楽活動で高い評価を得ている。

ルミネッセンス

形態:8曲入り
定価:¥2,500(税込)
品番:SNDL-0003/JAN:4514306011869
レーベル:sundaliru

amazon_associate_logo.jpg

公式ブログ http://s.ameblo.jp/sundaliru/

●あかり
1985年、栃木県生まれ。02年、史上初のエプロンアイドルとしてデビューするも、そのまま迷走を続け、フリーのアイドルライターとして細々と食いつないでいる。『卑屈の国の格言録』(サイゾー)、『アイドル墜落日記 増量版』(洋泉社)、DVD『小明の感じる仏像』(エースデュース)発売中。ブログ「小明の秘話」<http://yaplog.jp/benijake148/> サイゾーテレビ<http://ch.nicovideo.jp/channel/ch3120>にて生トーク番組『小明の副作用』(隔週木曜)出演中。ニューシングル「君が笑う、それが僕のしあわせ」発売中<https://www.cyzo.com/akr/>。

最終更新:2019/11/07 19:05
1234
ページ上部へ戻る
トップページへ
日刊サイゾー|エンタメ・お笑い・ドラマ・社会の最新ニュース
  • facebook
  • twitter
  • feed
特集

【4月開始の春ドラマ】放送日、視聴率・裏事情・忖度なしレビュー!

月9、日曜劇場、木曜劇場…スタート日一覧、最新情報公開中!
写真
インタビュー

『マツコの知らない世界』出演裏話

1月23日放送の『マツコの知らない世界』(T...…
写真
人気連載

山崎製パンで特大スキャンダル

今週の注目記事・1「『売上1兆円超』『山崎製パ...…
写真
イチオシ記事

バナナマン・設楽が語った「売れ方」の話

 ウエストランド・井口浩之ととろサーモン・久保田かずのぶというお笑い界きっての毒舌芸人2人によるトーク番組『耳の穴かっぽじって聞け!』(テレビ朝日...…
写真