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lyrical schoolがリキッドワンマンで見せた努力の累積 アイドルラップの開拓者は次のステージへ

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 そして、tofubeatsが提供した最高傑作のひとつ「プチャヘンザ!」へ。2011年12月22日に、tofubeatsが所属するネットレーベル・Maltine Recordsが主催して「プチャヘンザ!」と題されたイベントを六本木SuperDeluxeで開催したことがあった。そこでtengal6が「プチャヘンザ!」を歌ったとき、フロアが暴発したかのような熱気に包まれたことを思い出す。ステージも低く、演者もヘッズも汗まみれになったあの日の熱気が、約3年後のLIQUIDROOMで1000人規模で再現されていることに胸を揺さぶられずにはいられなかった。今夜の「プチャヘンザ!」後半ではヘッズのリフトも次々と起こっていた。

 「プチャヘンザ!」にはさまざまなヒップホップのアンセムからの引用が見られるが、lyrical schoolの楽曲を今夜33曲(!)もまとめて聴いたとき、これまでの音楽性の試行錯誤も実感した。たとえば「決戦はフライデー」のリズムセクションだけ聴くと80年代シティポップスのようだし、「perfect☆キラリ」にはアイドル歌謡感もある。初期のtengal6は、70年代と80年代の歌謡曲を大胆にサンプリングした2曲をレパートリーとしていたのだが、そうした時期を抜けてオリジナリティの獲得にこの4年を費やした結果、最新シングルにして本編ラストで披露された「PRIDE」の「lyrical school 胸を張っていたい」という歌詞へとたどり着いたのだろう。

 lyrical schoolが「アイドルラップ」と形容されるとき、「ヒップホップ」という言葉はラップという形式だけではなく、バックグラウンドの文化自体をも指すので、なかなかアイドルには使いづらいのだろうかと感じることもある(私の思い込みに過ぎないかもしれないが)。しかし、今夜のライヴを見たとき、lyrical schoolもなかなかのワイルドサイドを歩んできたグループであることも再確認した。そもそも結成当初、彼女たちのようにラップに特化したアイドルグループは他に存在しなかったのだ(ライムベリーの登場は約1年後だ)。しかも過去2度のメンバー脱退は、低い声質のメンバーがいなくなることで大きな声質の変化をもたらしたが、結成当初からのメンバーであるami、ayaka、mei、yumiは、スキルを磨きながらそれを乗り越えてきた。途中から加入したhinaとminanは、スキルの向上はもちろんのこと、それ以上にこのグループに加わった度胸をまず讃えたい。メンバーの努力の累積こそが今夜のLIQUIDROOMへと結実したのだ。

 アンコールでは「そりゃ夏だ!」で再びヘッズのリフトが発生し、「S.T.A.G.E」には深瀬智聖も参加した。そして、アンコールのMCでやっと長く話すlyrical schoolは、やはり何も肩肘を張るところがない女の子たちだ。それは私が初めてtengal6を見た日から、『PRIDE』がオリコンデイリーシングルランキング3位を獲得した現在まで、何も変わらない。lyrical schoolがなかったらヒップホップとは何の縁もなかったかもしれない、と思わせるところも彼女たちの魅力である。

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 「6本のマイク」で、ホンマカズキは歌詞をスクリーンに映した。「ちょっと振り返ってる/でもねdon’t stop次が待ってる/扉開け向かう新たなステージへ/まだまだこれから」。LIQUIDROOMが終着点ではなく通過点であることを明示した選曲だ。泣き出したminanの頭をmeiが撫でた。アコースティック・ギターを中心にした「tengal6」のアコースティック・ヴァージョンでライヴが終わった後は、来春のニュー・アルバムのリリースが発表されてヘッズを沸かせた。全員がマイクを置き、生の声で「ありがとうございました!」と挨拶したlyrical school。「photograph」でヘッズが一斉に点灯させたメンバーカラーの6色のサイリウムの輝きとともに、彼女たちは次のステージに向かうはずだ。

■宗像明将
1972年生まれ。「MUSIC MAGAZINE」「レコード・コレクターズ」などで、はっぴいえんど以降の日本のロックやポップス、ビーチ・ボーイズの流れをくむ欧米のロックやポップス、ワールドミュージックや民俗音楽について執筆する音楽評論家。近年は時流に押され、趣味の範囲にしておきたかったアイドルに関しての原稿執筆も多い。Twitter

最終更新:2014/11/05 09:00
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