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THE STARBEMS『VANISHING CITY』発売インタビュー

イカ天でバンドを辞めた! 震災で怒った! 元ビークル日高央が新バンドを立ち上げたワケとは

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──ビークルは英語で歌うバンドでした。英語詞に違和感を持つ人も多かったのでは?

日高 そうでしょうね。でも、自分はYMO育ちだったんで、そんな声は全然無視ですよ。海外進出も視野に入れていたというのもありますけど、外国人が聴いたときの印象と、日本人が聴いたときの印象が同じというのがよかったんです。日本人だから絶対日本語でならなきゃならないというのもないと思うし、日本語の曲は歌詞が先に捉えられちゃう。そういうレトリックに巻き込まれるのが嫌だったんで、歌っている内容に共感してもらうのも大切なんですが、そこに捉われて曲の評価が後回しになるのは、音楽として本末転倒だと思っていたんです。

──そして『BECK』の主題歌「HIT IN THE USA」で、ビークルは一躍全国区に名前を知られるアーティストになるわけですが。

日高 メジャーデビューした頃は、タイアップでパンチが出せた最後の時代なんです。『BECK』もタイアップでしたが、あれはでかかったですよね。もともとテレ東のアニメ枠で『BECK』をアニメ化するっていう時に、漫画はもちろん読んでいましたけど、それが当たるとは自分らも周囲も誰も思っていなかったんです。深夜だし、こういう話があるけどどうですか? って聞かれて、「やりたいに決まっている」って気軽に言ったら、話もあっさり決まってね。それがまさかあんなに当たるとは……。ラッキーでしたね。最初は、アニメファンにちょっと知ってもらえるかな、っていう感じで受けさせていただいたんですけどね。

──当時、20万枚のヒットになったんですよね。ヒットの実感ってありましたか?

日高 ありましたね。いまだにありますよ。いまだに『BECK』好きですとか言われますしね。俺が描いたわけでもないのに(笑)。その曲しか知らない人も増えていくわけで、その曲を「これぞビークル」とか言われちゃうわけです。そういうのも売れるメリットデメリットなんだろうなって思いますけど、活動的には楽になりました。予算も出るようになって、ツアーもお客さんが入るようになり、グッズも売れるしってね。でも、売れちゃったことで、逆にバンドが短命になったという気もします。

──解散は2010年。理由はいったい、なんだったんですか?

日高 売れてしまったことで、自分たちが単なる、仮面のポップな面白おじさんみたいになっている気がして、逆にもっとエクストリームにしたいって思っていたんです。もっとハードなことをやろうって。でもメンバー的には、それは違うんじゃないか? って話になってね。音楽の志向性が合わなくなっていたんです。それぞれ、もっとエレクトロに振り切りたいとか、もっとポップに振り切りたいとか、歌ものがいいんじゃないかとかね、まとまらなくなっていた。売れたことで、いろんな方向性が見えすぎるようになっていたんです。

──解散が精神面に与えた影響は大きかったのでは?

日高 失恋みたいなものでしたよ。やっぱり悲しかったです。自分で始めたことだったのでね。でも、メンバーがやりたくないものを無理やりやらせるのも悪いし。

──バンド解散後、THE STARBEMSを結成。その後、素顔をさらして活動していくわけですが。

日高 そうです。お面以外の手って、もう素顔しかないですからね。名前も「ヒダカトオル」とカタカナにしていたものを漢字に戻しました。ビークルの時はポップに見えたほうがいいというのでカタカナにしていましたが、もうそうする必要もないのでね。素顔に感しては、さすがに慣れるのに時間がかかりました。写真撮られるにしても、お面って楽でしたから。お面つけているから動きも大きくできた、というのもありましたしね。

──THE STARBEMSについては、そもそもどういうコンセプトで立ち上げたんですか?

日高 とにかくハードなものをやろうと思って立ち上げたんですけど、立ち上げの直前に震災(東日本大震災)がありまして、それで少し雰囲気が変わってしまいましたね。最初は明るくポップなラウド集団というイメージだったんですけど、震災以降にラウドをやるにも、大義名分が必要な空気になってしまったんです……。どの音楽もそうだったと思いますが。自分の中でも、そうしないと納得がいかなくなっていて、ただ単に楽しく「わーってやりましょう!」っていうのも、このタイミングでは違うなって思ったんです。震災直後に弾き語りの企画で、郡山とか福島とか、3カ所くらい東北を回ったんですけど、実際に惨状を目の当たりにすると、「生半可な気持ちじゃあかんな」って思い直しましたし、ビークルで行かなくてよかったですね。お面かぶって「オマンコール」なんて無理ですよ。価値観も変わってしまったし、震災を経て初めて自分の中で浮き彫りになったこともたくさんあって、あらためてビークルを辞めるべきタイミングだったんだなとも思いました。

──THE STARBEMSの1枚目(『SAD MARATHON WITH VOMITING BLOOD』2013年6月発売)が発売されて、かつてのビークルのファンの反響はどうだったんでしょう。

日高 良くも悪くも、ビークルを期待していた人はきれいにいなくなりましたよね。でも、ゼロからのスタートでいいって始めたんで、ビークルのファンに聴いてほしくないわけじゃないけど、同じことを期待されても……というのはあります。年々、うるさいじじいになりたいって自分は思っているんでね。ビークルっぽい曲もあるとは思いますけど、ビークルっぽいのは期待しないでね、というのが正直な気持ちです。

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