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土岐麻子×中塚武、特別対談「ジャズの歌を知ることで、ポップスの中でもっと自由になれる」

「どんな局面においても、自分以外のものにはなり得ない」(土岐)

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ソロデビュー10周年のニューアルバム『STANDARDS in a sentimental mood ~土岐麻子ジャズを歌う~』では、細野晴臣とのデュエットも披露している。

――土岐さん、中塚さんはポップスのフィールドで活動されているわけですが、ジャズの要素もかなり入ってますよね。そのバランスはどう取ってるんですか?

土岐:あえてジャンルで考えると、ポップスとジャズでは成り立ちがぜんぜん違うというか。まずポップスは、実際のサイズよりも長い時間をかけて構築するんですよね。曲にもアレンジにも歌い方にもいろんな可能性があるんだけど、そのなかでいちばんいいところに標準を合わせて作り込んでいくというか。ジャズはそうじゃなくて、瞬間の構築だと思うんです。プレイヤー同士の反応によって、2度と同じ演奏は出来ないっていうのが、ジャズのひとつの特徴ですからね。

中塚:そうだね。

土岐:そのなかに奇跡みたいな瞬間があるんですよね。語尾の長さとかニュアンスとか、「いま、ばっちりだったね!」っていう。

中塚:ジャズはDJのバック・トゥ・バックにも近いかもしれないですね。ふたりのDJが同じブースで交互にレコードをかけ合って、興が乗ると朝までやっちゃうっていう。今回の僕の作品ではそういう感じからあえて離れて、もっと決め込んで、作り込んでるんですよ。そういう意味では、映画音楽に近いのかもしれない。

――ジャズ的な“瞬間の構築”ではない、と。

中塚:ジャズの演奏家は、その場でパッと瞬間的に表現するために日々猛練習してると思うんですよ。ただ、今回のレコーディングの現場では「瞬発力のみでOK」ということは無かったです。やっぱり、ライヴとレコーディングでは判断基準がまったく違うんだと思います。ただ、プレイヤーに関していうと、ホーンの演奏家の皆さんは「ジャズを通ってないと、話にならない」というところがあって。

土岐:そうなんだ。

中塚:日本は吹奏楽のシーンがしっかり存在していて、学生時代にそこでジャズの基本的なイディオムを学ぶんですよね。そのシーンのなかで「あの大学のあいつは凄い」って言われるような人がプロになるんだけど、僕ら作曲家・編曲家としては、そういうジャズのイディオムを通過した人たちが最高に楽しく演奏できるようなスコアを書く技術は、基本中の基本だったりします。

――歌に関してはどうでしょう? ジャズを通ることで、さらに表現の幅が増すということもありますか?

土岐:ジャズの歌を知ることで、ポップスのなかでももっと自由になれるっていうことはあるかも。ただ、そうなるためには技術、度胸、経験が必要だし、私はまだ獲得できてないと思っていて。だからこそ、ジャズは憧れなんですよね。

中塚:今回のアルバムを聴いてると、歌としての体幹がしっかりしてるなあって。どんなジャンルをやっても、土岐麻子としての軸がブレないというか。歌のインナーマッスルが鍛えられてる(笑)。

土岐:そうだったらうれしいですね~。

――おふたりともすごく分析的というか、自分の音楽をきちんと言葉に出来るのもすごいと思います。

土岐:どうなんですかね? ただ、自分が何を考えてるか?ということは、よく友達と話すんですよ。最初は単なるグチだったりするんだけど(笑)、最終的には生き方の話になるっていう。恋愛でも仕事でも何でもそうなんだけど、自分が何を考えていて、何を求めているか、どういう人になりたいかということは、どんなことにおいても同じなんだなって。

中塚:そうやって話し込むことは大事だよね。

土岐:そうそう。話してると「また同じところに着地したね」ということも多いし。それはつまり、どんな局面においても、自分以外のものにはなり得ないということだと思うんです。音楽を作るときも「自分以上のことは出来ない」と考えてるので。それは今回のアルバムも同じですね。

中塚:それは感じる。「自分が歌って、それで全部」というか。

土岐:だから、ヘンに緊張しなくなったんですよね。いまの自分以上の歌は歌えないんだから、それでいいっていう。それが歌の体幹ってことなのかもしれないですね。

(取材・文=森朋之/撮影=竹内洋平)

■リリース情報
『Disney piano jazz“HAPPINESS”Deluxe Edition』
発売:2014年11月12日(水)
価格:2700円+税

1.小さな世界(ニューヨーク・ワールドフェア)
2.愛を感じて(ライオン・キング)
3.美女と野獣(美女と野獣)
4.メインストリート・エレクトリカル・パレード(ディズニーランド(R))
5.パート・オブ・ユア・ワールド(リトル・マーメイド)
6.ビビディ・バビディ・ブー(シンデレラ)
7.いつか夢で(眠れる森の美女)
8.レット・イット・ゴー(アナと雪の女王)
9.ホエン・シー・ラヴド・ミー(トイ・ストーリー2)
10.君がいないと(モンスターズ・インク)
11.ハイ・ホー(白雪姫)
12.星に願いを(ピノキオ)
13.スーパーカリフラジリスティックエクスピアリドーシャス(メリーポピンズ)
14.アンダー・ザ・シー(リトル・マーメイド)
15.輝く未来(塔の上のラプンツェル)
16.ホール・ニュー・ワールド(アラジン)
17.チム・チム・チェリー(メリーポピンズ)
18.ふしぎの国のアリス(ふしぎの国のアリス)
19.お砂糖ひとさじで(メリーポピンズ)
20.くまのプーさん(くまのプーさんとハチミツ)
21.レット・イット・ゴー(イン・クリスタル・クリスマス)(アナと雪の女王)

『STANDARDS in a sentimental mood ~土岐麻子ジャズを歌う~』
発売:2014年11月19日(水)
価格:3,240円(税込)

<CD収録内容>
01.In a Sentimental Mood
02.Round Midnight
03.Stardust
04.Lady Traveler
05.Misty
06.The Look of Love
07.Californication
08.After Dark
09.Smile
10.Christmas in the City (Performed by 土岐麻子 & 細野晴臣)
11.Cheek to Cheek

■ライブ情報
『TOKI ASAKO 10th ODYSSEY ソロデビュー10周年 感謝祭!! どこにも省略なんてなかった3952days』
2014年12月6日(土)ビルボードライブ大阪
2014年12月11日(木)名古屋ブルーノート
2014年12月20日(土)恵比寿The Garden Hall(スペシャル・ゲスト:土岐英史)

最終更新:2014/11/19 09:00
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