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ドレスコーズ志磨遼平、“ひとりぼっちのアルバム”を語る「極限状態を望んでいる自分がいる」

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【リアルサウンドより】

 渦中のバンドが12月10日にアルバム『1』をリリースする。9月24日に丸山康太(ギター)、菅大智(ドラム)、山中治雄(ベース)が脱退し、「4人体制での活動終了」を発表したドレスコーズ。つまりはボーカルの志磨遼平ひとりが残ったわけだが、今回届いた『1』は“災い転じて福となす”を地で行く充実作である。リズムアプローチに重点を置いた前作『Hippies E.P』から一転、シンプルな歌モノが並ぶ本作では、志磨のメロディメイカーとしての才気が際立つ。ポップでメロウ、それでいて荒涼としたサウンドはバンドの新境地でもある。今回のインタビューでは、ひとりでアルバムを作り上げた過程や、メンバー脱退から約2ヶ月を経て感じること、さらにはこれからの展望について話を訊いた。

ひとりになったことはまだ受け止めていない

――9月に他のバンドメンバーの脱退という衝撃の発表があり、その後、志磨さんひとりでアルバムを作り上げました。発表の時点ではアルバムの構想はどの程度あったのでしょうか?

志磨:9月24日の発表の時点では、ゼロパーセントですね。4人での活動を終了させると決めた時点で、録音できていた曲はすべて『Hippies E.P』に収録したので。断片的に考えていた曲は当然、ありましたけど、結果としてこのアルバムに入った曲は、メンバー脱退以降に書いたものです。

――『Hippies E.P』に関する志磨さんの発言を振り返ると、「個人的ではない音楽」を志向していて、特にリズムパートで意欲的な取り組みをしていましたね。一方、こうして届いたニューアルバムは、まさに志磨さん個人以外の何ものでもない作品に仕上がっています。ご自身としては、ひとりになってどんな作品を作ろうと思いましたか。

志磨:メンバーの脱退という事実よりも、僕の32年の人生の中で得た知識、音楽的な素養―—楽典的というよりはもっと慣れ親しんだ曲のこと―—だったり、友人との言葉遊びだったり、読んだ本だったり、あるいは人との出会いや別れという経験が、そのまま音楽になっているという感覚です。ひとりで作るものとしては当たり前のことかもしれませんが、これまではそういう風に音楽を作ろうと思ったことがなかったんですよね。「新しいことをやろう」という計算は皆無で、はからずも自分としてはえらく新鮮な作品になったな、という感じです。

――毛皮のマリーズにしてもドレスコーズにしても、パーソナルな意味合いの楽曲はあったと思います。けれど、本当の意味で個人として作るのは初めてで、そういう意味での新しさはあったと。

志磨:そうですね。これまでは「何者かになりたい」という、自己否定ともいえる変身願望のようなものがあって。例えば、イギー・ポップのように強くなりたいとか、デヴィッド・ボウイのように華麗なステージングがしたいとか(笑)。いろんな音楽を研究して、それを分析しては、自分の型にする――毛皮のマリーズというバンドはそういうものを得意としていたし、ドレスコーズは最初から、僕がずっと憧れていたような完全なオリジナリティを持ったメンバーを誘っていますから。ドレスコーズは、このメンバーといれば、僕が憧れていた、誰にも似ていない音楽を生み出せるかもしれない、という挑戦でした。なので、今回のアルバムは最初から僕の憧れのようなものが視野に入っていない、初めての作品ですね。だからすごく早くできたし、たぶんそういう物を作ろうとして急ぎました。

――自分の中から出てくる感覚を、生のうちに作品にすると?

志磨:そうです。バンド時代とひとりぼっち制作とのいちばん分かりやすい違いがそこですね。今日書いた曲を明日録音できるという、インスタントな感じ。ドキュメントというか、そういうものにするべきだと思ったんです。

――作品の冒頭から「別れ」がひとつのテーマですね。1曲目の「スーパー、スーパーサッド」は、恋人や家族との別れかもしれないし、リスナーはメンバーとの別れを想像するかもしれない。それを描きながら、始まりや復活が描かれているのが、この作品に不思議な明るさをもたらしていると思います。あらためて、バンドでの理想の形が途絶えたことをどう受け止めたのでしょうか?

志磨:まだ受け止めていないんです。受け止める前に、アルバムを作るということに逃げましたから。受け止めると、ちょっとやそっとでは立ち直れないショックを自分が受けることは、火を見るより明らかなので。だから、『Hippies E.P』のレコーディングの後、4人での活動終了の次の日から作曲にとりかかって、そこからはずっと休みなく制作に没頭して。そうすると、すごく楽なんですよ。自分の内面と向き合って悩むのは、音楽制作のひとつの側面であって、レコーディングはものすごく単純な作業なんです。それに没頭することで、現実逃避しました(笑)。

――これから受け止めていくということですね。

志磨:そうですね。恋人との別れのようなもので、ふとした瞬間、些細なことで気づいたりするんだと思います。例えば、テレビ局の楽屋が広かったり、どこかに移動するとき、かならずメンバーの家の中間地点ということで明大前に集合していたのに、自分の家から出かけられるとか(笑)。いろいろと楽にはなっているんですけど、そんなふうに「ああ、ひとりなんだな」って感じることはあります。

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