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藤巻亮太が明かす、“ソロ第二幕”に向けた葛藤と覚悟「レミオロメンとの差別化が縛りとしてあった」

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「生きていくってすごく一筋縄ではいかないな」

――メロディやサウンド面で見ると、『ing』は藤巻さんのすごくリリカルで叙情的な部分、ある種スイートな部分が出ています。長く聴いてきた藤巻さんの音楽という印象ですが、ご自身の感覚としてはどうですか?

藤巻:生きていくってすごく一筋縄ではいかないな、という思いがあります。10年前は10年前で何かを悩んでいたはずで、必死で生きてきた結果今の自分がいるということだと思うんです。でも人は過去に戻れないからこそ、今感じるいろんな感情…甘いだけじゃなくて苦いも辛いもしっかり味わっていくような生き方をしたいし、いろんな味わいみたいなところに生きていく光みたいなものを見つけた感覚、そこに向かって言葉を作っていこう、という気持ちがありました。

――それは10年前とは違う感覚ですか?

藤巻:生きているというのはその現在進行形の「ing」、やっぱり今なんですよね。人間って過去に囚われたり、未来に不安を覚えたりする生き物なんだけれど、そういう中から今というものを取り出せる時に曲ができるんだと思います。そういう向き合い方の大事さとか、それを歌っていこうと思ったのが、『ing』から始まるソロの第二章です。すごく、ここから始まる、という気持ちでいます。

――その境地にたどり着くまでに、具体的に行ったことはありますか。

藤巻:弾き語りを始めて、細かくライブハウスを回りましたね。そのなかで歌うことの楽しさやお客さんと出会えることの喜び、ギター1本と歌でどこまでやれるのか、といったようなすごくシンプルなところに立ち返れたことが大きいと思います。弾き語りでは言葉をどう聞いてもらうか、ということについてものすごく勉強になりました。あとは旅行です。8月はアラスカに行ってきました。アンカレジで1日だけホテルに篭った日があって、そこで「ing」の1コーラスができました。まだ夏なんだけど「今年はどんな1年だったかなあ」という気持ちが自然に出てきたんですよね。ちょうどそのときに広島の土砂災害があって、それをアラスカからテレビで見ました。今年1年、悲しいことがあって泣いている人がいる一方で、自分にとっての1年もあって、その中で今どういう風に生きるべきか、自分は本当に一生懸命生きられてるのか、ということをすごく考える時間になりました。

――日本から距離を置いたことで見えたものもあるでしょうね。

藤巻:日常生活のルーティンから一度出てみることでわかることがあると思います。30代になってから特に旅が好きで、旅に出ることで「ここが自分の中で淀んでいたんだろうな」「こういうループから抜け出せていなかったんだな」ということを感じながら、自分にとって新鮮な音楽や言葉を発想していけるんですよね。アラスカでは季節が1つくらい先で、夏でも日本の秋っぽいんです。その寒さが、妙に「今年1年はどんな年だったかな」という気持ちにさせたのかもしれません(笑)。実際旅は、振り返ったり見つめたりする良い機会なので、それがなかったらこういうフレーズになっていなかったかもしれません。

――アンカレジのホテルで曲の原型ができたとのことですが、歌を浮かび上がらせるようなアレンジに仕上がっています。

藤巻:サビは繰り返すコード進行なんですけど、だからこそその中で問い掛けが歌いやすくて、問いに対して視点の違うアンサーでサビのキャッチボールができたらいいな、と思いました。それからちょっとUKっぽいところもあったりします。イメージした、ということはなかったんですけど、ギターのアルペジオが冬を匂わせるようなもので、アレンジの中で温度感が出せたかと思っています。歌は温かいんだけれど、コード感や演奏はどこかザラッとしていて、その寒暖のコントラスト、緩急のあり方はいいところで落ち着けたいと思っていました。

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