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週刊!タレント解体新書 特別編

『笑っていいとも!』終了で迎えたテレビの大きな転換期 カギを握る「タレント」は?

 ここ数年でいわゆる「ブレーク」を果たしてきたのは、いずれも芸人であった。特に持ちギャグやフレーズを持った芸人である。スギちゃんしかり、レイザーラモンHGしかり、エド・はるみしかり。今年も日本エレキテル連合というブレーク芸人は誕生したが、かつてと比べてその数は明らかに減っている。これはお笑いブームがいったん終わりを告げたという事実にも由来するが、視聴者や制作サイドが、いわゆる「一発屋」に辟易しているということもあるだろう。むしろ現在の「一発屋」の座は、佐村河内守氏や、小保方晴子氏や、号泣県議が担っている。これ以上の「一発屋」は、もはや必要ないということだ。

 だからこそ前述したブレークタレントは、「本業」を持っていることが重要である。本業がほかにある以上、「一発屋」になることはない。テレビ以外の場所が彼らにはあるのだから。そして社会全体がどうかしてしまっている今、この傾向は今後も続くだろう。テレビしか場所を持たないタレントは、なかなか世に出るのが難しい時代が来ているのではないだろうか。

<3>「芸人」は新たな地平を目指す

 2014年12月現在、いわゆる「ネタ番組」は日本のテレビには存在していない。数年前のネタブームがウソのようだが、今年は最後の砦ともいえるNHK『オンバト+』が3月をもって終了。いよいよ若手芸人が光を浴びる場所はなくなっている。加えて、前述したように上が「強い」あまり、中堅芸人の高年齢化も進んでいる。どこを見渡しても八方ふさがりの状況で、「芸人」は新たな地平を目指すことになった。

 劇団ひとりの『青天の霹靂』映画監督デビューや、アンジャッシュ・渡部のグルメタレントへの転換などもその一つだが、最も象徴的だったのはバカリズム脚本によるフジテレビのドラマ『素敵な選TAXI』が挙げられるだろう。深夜のチャレンジや単発ものではなく、夜10時台の連続ドラマの脚本である。そしてバカリズムはそのハードルを軽やかに飛び越え、脚本家としても一流であることを証明した。決して強いキャストが集まっているわけでもなく、時にはほぼ丸々タクシーの中だけで完結する回もあったが、視聴率的にも大健闘。面白い脚本があればドラマは見られる、という当たり前の事実を知らしめた。

 もちろん、そんなことができるような才気と意欲あふれる「芸人」は多くはないだろうが、しかし事実として「芸人」の数に対して席が少なすぎるというのは確かだ。しかしこれは、ある意味ではチャンスでもあるだろう。席がなければ、席を作ればいい。ライブシーンを見れば、漫才もコントもネタの質は充実している。テレビの枠を飛び越えて「芸人」の才能が求められる場所をどうやって作るのかが、これからの「芸人」の課題になるだろう。

<総括>
 『笑っていいとも!』終了という事件は、将来から振り返っても大きな転換点だったと語られることだろう。さらにいえば、視聴環境の変化やネットにおける動画配信サービスの充実、ならびにデバイス環境も大きく変わりつつある。コンテンツだけでなく、テレビそのものが大きく変わることを要請されていて、実際に大きく変わりつつある。今後もテレビの試行錯誤が続くことは間違いないが、それでも新しい息吹は確かにある。新しいテレビの時代が、もうすぐそこまで来ている。2015年からのテレビは、果たしてどんな風景を見せてくれるのだろうか? いち視聴者として、楽しみでならない。
(文=相沢直)

●あいざわ・すなお
1980年生まれ。構成作家、ライター。活動歴は構成作家として『テレバイダー』(TOKYO MX)、『モンキーパーマ』(tvkほか)、「水道橋博士のメルマ旬報『みっつ数えろ』連載」など。プロデューサーとして『ホワイトボードTV』『バカリズム THE MOVIE』(TOKYO MX)など。
Twitterアカウントは @aizawaaa

最終更新:2015/01/01 13:01
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