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小保方晴子、佐村河内守、百田尚樹……今年もお騒がせ!【2014年週刊誌スクープBEST10】

第8位
「村上春樹が酩酊した『ドイツ大麻パーティ』の一部始終」(「アサヒ芸能」8/14・21号)

 日本でもマリファナを解禁せよという声は以前ほどではないが、一部に根強くある。だが自制心のない連中がマリファナを吸って自動車を運転することを考えると震えがくるのは、私だけではないだろう。

 そう思っていたら作家の村上春樹氏がアサヒ芸能の「袋とじ」になっているではないか。表紙にはだいぶ若い村上氏がややトロンとした表情で写り、その下に「『ノルウエーの森』を生んだ『大麻パーティ』を発掘スクープ!」と書いてある。

 アサ芸と村上春樹という取り合わせは珍しい。世界的に大麻解禁の流れにある中で、いまさら大麻疑惑でもないだろうとは思うが、取り合わせの妙で今週の第1位に推す。

 ときは奇しくも『1Q84』(新潮社)ならぬ1984年。「BRUTUS」(マガジンハウス)の取材のために訪れたドイツ・ハンブルクでのことだそうである。

 撮影兼案内係を務めたのがドイツ人元フォト・ジャーナリストのペーター・シュナイダー氏で取材は1カ月ほどだったという。

 某日、村上氏たちはハンブルクの郊外にある廃駅を利用したクラブを取材することになった。現地のコーディネーターがアレンジしたもので当初はカメラマンだけが出向くという話だったが、村上氏も同行したいといい出した。

 しかし、現地へ行ってみると運悪くリニューアル中で見学させてもらえず、帰ろうとしたところ、クラブのオーナーであるドイツ人妻が、自分の家に寄って行かないかといってくれたので、4名が寄らせてもらったという。

 最初はビールで乾杯し、当初はクラブ経営のことなどが話題に上っていたが、やがてオーナーがこう切り出した。

「よかったら一服やらないか?」

 この一服はタバコではなくマリファナのことである。当時ドイツでも大麻は違法だったが、クラブ経営者など業界人が自宅でマリファナやハッシシ(大麻を固めた合成樹脂)をプライベートに楽しむのは日常茶飯事だったという。

 通訳が村上氏に伝えると、村上氏は事もなげにこう答えた。

「ええ、大麻なら、僕は好きですよ」

 そのときシュナイダー氏が撮影した何点かの写真が「袋とじ」の中にある。

 彼がフイルムを整理していたところ出てきたのだそうだ。それまで、その日本人がノーベル文学賞候補にまでなった村上春樹と同一人物だったとは気がつかなかったという。

 シュナイダー氏はなぜ今、このことを公表しようと思ったのか。

「別に彼を落としめようとか、批判しようとかという気持ちはない。彼の作品にはマリファナを扱う描写も出てくるし、本人もマリファナ好きを公言してるのはファンなら知っている。その彼が若い時にこのようにマリファナを楽しんだということを彼の“ファン”も知りたいと思ったからだ」

 たしかに、その経験は彼の作品に存分に生かされている。10年に発表された『1Q84』の中で、主人公、天吾は父の入院先である病院の看護師たちとパーティーをやった後、その中でいちばん若い女性である安達クミにマリファナを勧められる。その感覚をこう表現している。

「秘密のスイッチをオンにするようなかちんという音が耳元で聞こえ、それから、天吾の頭の中で何かがとろりと揺れた。まるで粥を入れたお椀を斜めに傾けたときのような感じだ。脳みそが揺れているんだ、と、天吾は思った。それは、天吾にとって初めての体験だった~脳みそをひとつの物質として感じること。その粘度を体感すること。フクロウの深い声が耳から入って、その粥の中に混じり、隙間なく溶け込んでいった」

 『うずまき猫のみつけかた』(新潮社)の中でも村上氏はマリファナについてこう書いている。

「経験的にいって、マリファナというのは煙草なんかよりも遙かに害が少ない。煙草と違って中毒性もない。だからマリファナをちょっと吸ったぐらいで、まるで犯罪者みたいに袋叩きにあうなんていう日本の社会的風潮は、まったく筋が通らないのではないか」

 これだけマリファナ擁護論を展開しているのに、アサ芸が村上春樹事務所に事実関係を確認すると、事務所から連絡を受けたという都築響一という編集者が出てきて、

「取材旅行中、僕は常に村上さんと一緒に行動していたので、こちらの知らない場所で大麻というのは、写真を含めてありえないかと思います」

 と答えている。

 常にいたという都築氏の姿はシュナイダー氏の写真の中には発見できなかったと、アサ芸は書いている。

 われわれが若い時はマリファナやハッシシ、LSDなどは簡単に手に入り、新宿の喫茶「風月堂」はそうした連中の溜まり場であったし、罪悪感などなかった。

 だから大麻を解禁してもいいとは、私は思わないが、大作家になると、こうした過去の微笑ましい外国での経験でも、認めるわけにはいかないのだろうか。

〈元木昌彦の眼〉 この報道の後を追う週刊誌は当然ながらどこもなかった。いまでも真偽の程はわからない。村上側がこの記事に抗議したという話も、私は聞いていない。やしきたかじんとその妻との純愛ノンフィクション『殉愛』を書いた百田尚樹のその後の「騒動」についても週刊誌は最初ほとんど書かなかった。作家が最大のタブーになってしまっていいいのか? 出版社系週刊誌の最大のウイークポイントはそこにある。

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