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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.306

これからボクの彼女(前田敦子)が枕営業します 男女の性欲と本音が交叉する『さよなら歌舞伎町』

sayonarakabukicho03.jpg男たちが吐き出す性欲を全身で受け止める聖女役を演じたのは『メビウス』の主演女優イ・ウヌ。今回も美しいヌードを披露している。

「好きでやったわけじゃないよ。マクラなんだからいいじゃん。デビューできるし。そんなこと気にするの? 小せぇよ」。翌朝、ラブホから出てきた沙耶は、徹の前で精いっぱい毒づいてみせる。そう言いながらも、本心では徹に思いっきりビンタしてほしかった。「お前が追い掛けてきた夢は、枕営業で手に入るようなものだったのか」と叱ってほしかった。でも、徹は自分のことすらままならず、恋人に対してそこまでの包容力は持ち合わせていなかった。歌舞伎町に差す朝日が2人には痛かった。お互いの心の傷を癒し合う術を知らない若い2人に代わって、韓国人のデリヘル嬢(イ・ウヌ)とその恋人(ロイ)は浴室で素っ裸になり、お互いの体を洗いっこする。キム・ギドク監督作『メビウス』で狂女役を怪演してみせたイ・ウヌが本作でもフルヌードを披露し、自分が重ねた噓と男たちが吐き出した性欲でまみれた身体を洗い流していく。その様子を廣木監督は得意の長回しでじっくりじっとりと映し出す。いつの日か、こんな美しい官能シーンを前田敦子も演じるようになるのだろうか。「本格的な女優」を目指している前田敦子は、自分の思い描く夢に今どれだけ近づいただろうか。
(文=長野辰次)

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『さよなら歌舞伎町』
監督/廣木隆一 脚本/荒井晴彦、中野太 音楽/つじあやの 出演/染谷将太、前田敦子、イ・ウヌ、ロイ(5tion)、樋井明日香、我妻三輪子、忍成修吾、大森南朋、田口トモロヲ、村上淳、河井青葉、宮崎吐夢、松重豊、南果歩 配給/東京テアトル R15 1月24日(土)よりテアトル新宿ほか全国ロードショー (c)2014『さよなら歌舞伎町』製作委員会
http://www.sayonara-kabukicho.com

最終更新:2015/01/23 14:00
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