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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.313

普通じゃないからこそ、世界はこんなにも美しい! 天才学者の数奇な生涯『イミテーション・ゲーム』

imitationgame02.jpgアラン・チューリング(ベネディクト・カンバーバッチ)は暗号解読チームに参加するが、天才ゆえに凡人たちからは奇人変人扱いされ続ける。

 暗号解読チームに新たに加わった女性、ジョーン・クラーク(キーラ・ナイトレイ)はどんな難解なクロスワードパズルでも瞬く間に解いてみせる天才だった。ジョーンは旺盛な知的好奇心に加え、女性ならではの社交性と現実的な処世術も持ち合わせていた。そうでなくては保守的な英国社会では生きていけなかった。チューリングはジョーンの聡明さを敬い、ジョーンは数式の世界をこよなく愛するチューリングの純粋無垢さに惹かれる。ジョーンが取りなす形で、チューリングが作り上げたエニグマ解読マシン「クリストファー」の改良化に、ヒューら他の暗号解読チームのメンバーも協力することになる。やがて暗号解読チームはエニグマ解読の手掛かりをつかみ、ついに「クリストファー」がその暗号文を読み上げる日が訪れる―。エニグマ解読によって、ドイツ軍はUボート作戦の大幅な変更を余儀なくされ、第二次世界大戦は早期終結へと向かう。チューリングは英国を勝利に導いた大殊勲者となるが、エニグマ解読の事実は国家機密扱いとなり、戦後50年間にわたってチューリングの業績は公表されることはなかった。

 BBCドラマ『SHERLOCK(シャーロック)』で大人気を博したカンバーバッチの変人ぶりは、もはや名人芸の領域だ。変わり者ゆえの純朴さを感じさせるカンバーバッチに、母性本能をくすぐられる女性ファンはますます増えるだろう。また、カンバーバッチは『イミテーション・ゲーム』の撮影に入る前に、舞台『フランケンシュタイン』でフランケンシュタイン博士と怪物役を日替わりで演じていたというのも興味深い。そして、カンバーバッチとは『つぐない』(07)でも共演しているキーラ・ナイトレイが素晴しい演技を見せる。暗号解読チームの紅一点であるジョーンは、どうしようもない変人のチューリングをあるがままの存在として受け止めてみせる。男女の性愛を越えた大きな愛情で、すっぽりとチューリングを包み込む。孤独な天才を明るく照らす、まさに夜の光り(ナイトレイ)だった。暗号解読チームの解散後、ひとりぼっちで研究を続けるチューリングに対し、ジョーンは最高に温かい言葉を投げ掛ける。

「普通じゃないあなたがいるからこそ、世界はこんなにも美しいのよ」

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