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週刊!タレント解体新書 第23回

草なぎ剛の“がんばらない”司会術 フジテレビ系『草なぎ剛の第23回がんばった大賞』(3月16日放送)を徹底検証!

 つまり草なぎ剛の司会術とは、自分が周囲を助けるのではなく、自分が周囲から助けられるという、かなり特殊な形なのだ。それはきっと草なぎ剛の人となり、パーソナリティと、あるいは周囲の人物を信頼しきっているという意識による。そのために、草なぎ剛は自分を弱く打ち出す。ローラに対して「僕のドラマ見てる?」と問いかけ、即座に「見てなーい」と返されるというやりとりは、草なぎ剛にしかできないものだといえるだろう。

 テレビ番組はチームプレイだといわれるものだが、草なぎ剛は誰よりもそれを理解している。番組をよくするためになら自分を犠牲にすることを一切厭わない、強いプロ意識がそこにはある。

(3)あくまでも部外者である

 ここまで草なぎ剛の独特な司会術について書いてきたわけだが、しかし彼は番組終盤で、司会者として極めて正しい選択をする。ほぼすべてのVTRを見終わって、出演者たちがそれぞれ面白いと思った場面を口にする流れだ。そこで草なぎ剛もどれが印象に残っていたかを問われるのだが、その答えがすごい。「いっぱいありすぎて、何がなんだかねえ」と、回答そのものを拒否するのである。

 ここで、スタジオでは笑いが起こる。何かひとつぐらい答えなさいよと、そういった意味での笑いだ。しかしここでの草なぎ剛の選択は、一人のタレントとしては笑いの対象ではあるが、司会者としては極めて正しい。そもそも司会者とは、番組の出演者でありながら部外者である。ここで司会者である草なぎ剛が何かしらの答えを発したら、それが番組としての総意になりかねない。だからこそ草なぎ剛は、そこでの回答を避ける。司会者としては、明らかに正しい選択だといえるだろう。

 さらに恐るべきは、(1)(2)の伏線があるために、この発言が笑いになっているというところだ。決して派手ではない。目に見えるすごさではない。だが、この日の『草なぎ剛の第23回がんばった大賞』が常にハッピーな空間だったのは、司会者である草なぎ剛の功績である。恐るべき司会者の誕生が、この日、確かに行われたのだった。

【検証結果】
 ここまで読んでいただければお分かりかもしれないが、この草なぎ剛の司会術は、明らかにタモリの影響下にある。草なぎ剛本人がどこまで意識しているかは分からないが、『笑っていいとも!』で長年共演したタモリのDNAは、間違いなく彼に宿っているのだろう。気を張らない、欲張らない、がんばりすぎないという司会術。「やる気のある者は去れ」というタモリの言葉は、確かに草なぎ剛に根付いている。
(文=相沢直)

●あいざわ・すなお
1980年生まれ。構成作家、ライター。活動歴は構成作家として『テレバイダー』(TOKYO MX)、『モンキーパーマ』(tvkほか)、「水道橋博士のメルマ旬報『みっつ数えろ』連載」など。プロデューサーとして『ホワイトボードTV』『バカリズム THE MOVIE』(TOKYO MX)など。
Twitterアカウントは @aizawaaa

最終更新:2015/03/20 12:23
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