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ビルボードジャパンが「複合チャート」を作る意味とは? 担当ディレクターに狙いを聞く

【リアルサウンドより】

 ビルボードジャパンでは現在、CDセールスだけでなく、CDのPCへの読み取り回数(=ルックアップ)、デジタルダウンロード、ラジオでのオンエア数(=エアプレイ)、ツイート数といった複数の指標を用いた複合ヒットチャート「Billboard Japan Hot 100」を発表している。音楽の視聴スタイルが多様化する中で、同チャートはどんな方法論に基づき、ユーザーにいかなる視座を与えようとするのか。ビルボードジャパンのチャート・ディレクターを務める阪神コンテンツリンクの礒崎誠二氏に、その狙いや設計思想について話を聞いた。聞き手はリアルサウンドでもチャート分析記事を多数手がけるさやわか氏。

「アメリカのチャートは、僕らの感覚では10年ぐらい進んでいる」

――ビルボードジャパンのチャートは、近年になってから作られるようになったものですね。どういう経緯があったのでしょうか?

礒崎:弊社(阪神コンテンツリンク)が2006年にビルボードのマスターライセンス契約をしまして、そこに紐付いた形でビルボードチャートのマーケティングをもう一度日本でもやっていきたいと思ったんです。

――特徴としてはどういうチャートなのでしょうか。

礒崎:メインチャートはBillboard Japan Hot 100というものなんですけど、セールスのチャートではなく、ソングチャートになっています。つまりエアプレイとか、ダウンロード数などのデータを複合させることを最初から目論んだ形になっているんです。最初は私も知らなかったんですけど、ビルボードではHot 100の「Hot」という名前を付けるんだったら、複合チャートでなければならないというルールがあるんですよ。つまり、セールスチャートを作ることはある程度できるというふうには思っていたんですけれども、「Hot 100」であるためには、他のデータを合算しなければならない。しかも、もともとのアメリカのチャートはラジオでのエアプレイ数が入っていて、それも入れなければならないというルールだったんです。

――なるほど。しかし、国内ではオリコンのやっている販売チャートが多くの人に信頼されていますよね。そうした中で、なぜ新しく複合チャートを立ち上げようと思ったのでしょうか?

礒崎:まあ、ビルボードをやっているんだから、やるべきであろうという発想でしたね(笑)。しかし個人的な立場で言うと、セールスランキングではない形での、オルタナティブな音楽チャートが1つできてもいいのではないかなと思っていたということもあります。いわば、複合チャートというのを作ってみたかった。昔の歌番組「ザ・ベストテン」のリクエストのランキングには、ラジオの数字とかが入っていましたよね、「Hey! Hey! Hey!」のパーフェクトランキングも。そういう、テレビ局の企画的な形での複合ランキングはあったんですが、メディアとは独立した形で、ウィークリーで出していこうという動きは、国内にはなかった。ならば僕らが作るべきなのではないだろうか、という発想です。

――しかし、複合チャートだと単に販売数を記録するのとは違う指標が必要になりそうです。始められた当初から今まで、集計のやり方は変わっていってるんでしょうか?

礒崎:はい。国内の、どんどん変わるマーケットに応じた形での計算係数を作って、もろもろトライ・アンド・エラーを繰り返しています。特にビルボードUS側にいろんなノウハウがありますので、それをまず受け継いでいっています。アメリカのチャートは、僕らの感覚では10年ぐらい進んでいるんですよ。ビルボードとツイッターのリアルタイムチャートを作ってみたり、アルバムチャートにもCDとダウンロードだけでなくストリーミングを入れてみたりと、どんどん変化していく。そのノウハウをいろいろ教えてもらいながら、日本のチャートを作っていくという感じですね。たとえばいま我々は、全国主要エリア32局のAM、FMラジオの放送回数のデータをもらってます。そして1曲が5分として、一週間のうちでその5分間の曲と接触する確率を、視聴者数を加味しながら算出していきます。そしてさらに、そのラジオを聴いてCDを新規購入する確率を出しています。

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Billboard Japan Hot 100の5つの指標

――すごいですね。チャート好きにはたまらない数字だと思います(笑)。しかし、こういった数値というのは、どのくらい信憑性があるのかというふうに考える人もいると思うのですが。たとえばオリコンさんでも、複数枚購入だとか、ミュージックカードを合算してしまうことで、本当に人気があるかどうかわからなくなってしまうような問題が出てきて、セールスランキングがどこまで正しいのかという話になったりしますよね。

礒崎:我々は、公的な資料に基づいて計算公式を作らなければならないというルールがあるんですよ。僕ら自身も、マーケティングを進めていく上で、おそらくユーザーの方から「この指標を使ってやってるのは分かるけれども、それは結局ブラックボックスじゃないか」と言われる恐れはあると思ったんです。つまり、複数枚販売とかミュージックカードなどと同じ指摘は、遅かれ早かれされるだろうと思っているんです。だからこそ、指標としているデータをできるだけ開示して、納得性の高いものを作ろうとしています。この計算方式を作るためのデータはどれもネットで発表されているもので、それをどう計算するとこのチャートになるんだということを、米国側と相談して作っています。まあ、適当に数字を持ってきてもしょうがないので、合算する理由があるものを集めているわけですが。

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