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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.315

世界の終わりに咲いた、世界でたったひとつの花 モキュメンタリーの終着点『コワすぎ! 最終章』

kowasugi0401.jpg『コワすぎ! 劇場版』のラストに登場した、新宿上空に浮かぶ巨人。その出現から1年半が経ち、人々はもはや日常風景として受け止めていた。

 現実とフィクションの間には明快な境界線はあるのだろうか? そしてもし、現実とフィクションを隔てている境界線が消滅してしまったら、一体どうなってしまうのか? 白石晃士監督がライフワークとしている『コワすぎ!』シリーズの第7弾となる『戦慄怪奇ファイル コワすぎ! 最終章』を見ながら、そんなことを考えた。低予算のホラー作品ながら、モキュメンタリー(フェイクドキュメンタリー)としての面白さを追求する白石監督の情熱と奇想ぶりでカルト的な人気を博してきたオリジナルDVD『コワすぎ!』シリーズ。『戦慄怪奇ファイル コワすぎ! 史上最恐の劇場版』(14)は連日にわたって上映館が満席となり、ニコニコ動画でのシリーズ一挙上映の視聴者数は30万人にも及んだ。シリーズ完結編となる『コワすぎ! 最終章』では劇場版で投げ掛けられた大いなる謎に、白石監督自身が演じるカメラマン田代が挑むことになる。

 2012年からリリースが始まった『コワすぎ!』シリーズは、3.11以降のこの国の何を信じればいいのか分からない不穏な空気を映し出してきた。テレビ局や新聞社が扱わない超常現象を追う弱小映像会社の工藤ディレクター(大迫茂生)、アシスタントの市川(久保山智夏)、カメラマン田代(白石晃士)の3人が主人公だ。視聴者からの投稿映像をもとに、現代に甦った口裂け女、廃墟に出没する幽霊、河童伝説の残る池、トイレの花子さん、「東海道四谷怪談」の生みの親・鶴屋南北の正体……といった数々の謎に迫り、工藤ディレクターたちは現実世界とは別の異世界があることを確信する。

 これまで取材した怪奇現象は、すべて「タタリ村」が元凶になっていることを掴んだ取材クルーは、現在は廃村となっている「タタリ村」へ。そこで工藤たちが目撃したのは、山の向こうに姿を見せた大巨人だった。さらに取材の一線を踏み越えた工藤らは、この巨人は第二次世界大戦中に旧日本軍が呪術と科学を融合させて生み出した生体兵器・鬼神兵であること、戦後もその研究は継続して行なわれ、工藤の生い立ちが関係していることを突き止める。低予算の実写ホラー作品である『コワすぎ!』が、宮崎駿監督の『風の谷のナウシカ』(84)や庵野秀明監督の『新世紀エヴァンゲリオン』(95~96/テレビ東京系)といった名作アニメの世界観を取り込んで、壮大なSFファンタジーへと大変身していく驚きと快感が劇場版にはあった。劇場版で広げに広げた大風呂敷を白石監督はどう回収していくのかが、『コワすぎ! 最終章』の見どころとなっている。

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