日刊サイゾー トップ  > 震災4年 釜石市・大槌町のいま

東日本大震災から4年「観光バスツアー」で、岩手県の“被災地”釜石市・大槌町を歩いた

DSCF0899.jpg大津波によって、屋根に遊覧船が打ち上げられた民宿。モニュメントとして保存しようという声もあったが、二次被害の恐れから撤去された。

 先の旧大槌町役場庁舎を震災遺構として残すか否かについては町を二分したが、大なり小なり、至るところで同じようなことが起こっている。

「何か新しいものを造ろうとしても、『○○さんはお葬式できていいね。うちは、まだ見つかってないから』という声が必ず出てくる。そうするとみんな、何も言えなくなってしまって、なかなか物事が進まない。また、自分が『家に残れ』と言ったため、家族4人を失ってしまったある男性は、『仮設といっても、自分には屋根のある温かい家がある。家族がいつでも帰ってこられるように』と、津波で流された家の敷地にベンチと屋根を置いていたが、『それを見ると震災を思い出してつらい』という声があり、撤去を余儀なくされたそうです」(川崎さん)

DSCF0954.jpg市街地には、津波の到達位置を伝える看板があちらこちらに。

 
 川崎さんの話の中で特に印象的だったのは、「“もったいない”という気持ちなどが明暗を分けた」というものだ。軽トラックより普通車を持っていこう、パチンコで大当たりしたから換金してから逃げよう、お父さんの薬を取りに戻ろう、隣の家のおじいちゃん、おばあちゃんを連れてこよう……そんな気持ちで家に戻った人たちがみな、命を落としたという。

 「あそこに住んでいたおばあさんは……」「あの家のお嫁さんは……」と、まるで全員と顔見知りだったかのように故人を偲びながら語る川崎さんだが、“震災を語る”という行為は時につらいものではないのだろうか?

DSCF0915.jpg大槌北小学校校庭に建設された「福幸きらり商店街」。商店や飲食店をはじめ、美容院、クリーニング店、電気店に、TSUTAYAまで。

「みなさんが被災地を訪れてくれるのはうれしいです。このバスが通ると、このへんの人はみんな『あっ、今日も来てくれた』って感謝するんです。1人だろうが、30人だろうが関係ない。初めは震災のことを語るなんて不安もありましたが、ある日、町長さんに『ガイドやってるんなら、俺に話してみろ』と言われ、お話したんです。恰幅のいい町長さんで、目を閉じて聞いているもんだから、緊張して半分も話せなったんですが、『お前、いま言った言葉を忘れるなよ。それを絶対伝えろよ』と言われて、安心したというか、自信がついた。座敷に座りながらだったら、やっぱり涙なしには話せないけれど、身ぶり手ぶりを交えてなら気がまぎれる。震災を伝えたい、という気持ちが何より強いんです」(川崎さん)

 現在釜石市は、現存する日本最古の洋式高炉「橋野高炉跡」を世界遺産にしようと、市民が一丸となってPR活動に乗り出している。「6月に登録の可否が正式決まるんですが、富岡製糸場だって決まったし、間違いない。これをきっかけに、観光客が増えることを期待しています。現在はバスのチャーター便を増やしたり、ボランティアガイドも増員しているところ。楽しみだね」

 そう語る川崎さんの笑顔は、この日一番だった。
(取材・文=編集部)

最終更新:2023/01/26 19:00
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