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EXILEドラマが見せる、成熟した男たちの群像劇 『ワイルド・ヒーローズ』の可能性と課題とは

 30代になっても、どこか少年の面影が残っているジャニーズアイドルやイケメン俳優に対し、EXILE系の俳優の強みは、鍛え抜かれた肉体に象徴される成熟した大人の男性像を演じられることだ。

 『ワイルド・ヒーローズ』のキー坊たちも、営業マンやバイク屋、カラオケ屋の店長、クリーニング屋、トラックの運転手など、堅実な仕事を持っている。

 医者や弁護士といった華やかな職種ばかりのテレビドラマの世界では、なかなか描かれない肉体労働者の感覚を体現しているのがEXILE系の俳優たちなのだ。

 しかし、俳優たちの躍進に比べ、そのポテンシャルを生かした世界観をEXILEドラマが構築できているかというと、残念ながら、まだまだ物足りないというのが現状だ。

 『ワイルド・ヒーローズ』の地方都市でくすぶっている元ヤンキーたちが、少女を守るために、ヤクザや殺し屋と戦うという世界観は、映画秘宝が好きなボンクラ系のオタクに受けそうなモチーフだが、肝心のドラマ自体は、それっぽい要素を並べただけで、イマイチ踏込みが浅く感じる。

 複数の男たちが少女を守るという物語も、宮崎駿のアニメのようなオタク的な官能性がにおい立ってもおかしくないのに、どうにも映像が淡泊なのだ。

 おそらく、今のEXILEドラマに足りないのは、彼らの肉体に対してフェティッシュな欲望を見出して妄想の世界を展開したり、逆にEXILEという概念をオモチャにして批評的に遊ぶような、外部からの視線だろう。

 これはジャニーズアイドルが出演するドラマと比べるとよくわかる。

 ジャニーズドラマが意欲的なのは、先鋭的な脚本家や演出家が自由に振るうことをある程度、許容しているからだ。例えば、宮藤官九郎が脚本を担当した『池袋ウエストゲートパーク』や『木更津キャッツアイ』(ともにTBS系)や、野島伸司が脚本を担当した『49』、『お兄ちゃん、ガチャ』(ともに日本テレビ系)などは、ジャニーズアイドルという存在を批評的に読み込んだうえで面白いドラマに仕上げている。こういったセンスが、EXILEドラマには欠落している。

 とはいえ、『ワイルド・ヒーローズ』は、過去のEXILEドラマと比べるとやりたいことが、かなり明確になってきている。

 あとはそのEXILE的世界観をどうやって構築するかだけなのだが、そのためにはジャニーズドラマにおける宮藤官九郎や野島伸司のような、批評的に介入することによって、EXILEの魅力を引き出すことができるクリエイターとの出会いが必要だろう。

■成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

最終更新:2015/05/24 09:00
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