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週刊!タレント解体新書 第27回

平愛梨の天然さが愛される理由とは何か? 日テレ『笑ってコラえて!』(5月20日放送)ほかを徹底検証!

 上記2つは、どちらも「天然」の発言としてカテゴライズされておかしくない。だが、どちらがより平愛梨らしいかといえば【2】となる。というのは、【1】に関しては、考えて出てこない答えではない。たとえば「63歳のママに一言。何?」という大喜利に対して、この回答は成立している。だからこの答えは、平愛梨以外でも答えられることができるだろう。言い換えれば、ほかの「天然」タレントがこの言葉を口にしているところを想像することができる。

 だが【2】に関しては、おそらく平愛梨以外からは出てこない答えだ。というのも、この答えはディレクターからの質問に対してじっくり考えるのではなく、むしろ食い気味に質問をしている。ということから考えると、この質問をディレクターからされる時点で、平愛梨の中ですでに疑問が生まれていたのだということが分かる。「このポン酢、どこで買ったんだろう」と、ロケの最中で考えていたのだ。カメラが回っているにもかかわらず。ただじっと「このポン酢、どこで買ったんだろう」と考えてしまっていたのだ、平愛梨は。

 ここに、平愛梨の魅力がある。いわゆるただの「天然」であれば、面白い答えが飛び出るタイミングを予想することができる。だが平愛梨は、そのような問いの枠組みさえ飛び越える。どこでどう予想を裏切ってくるかが分からない。それは視聴者に対してはもちろんであるが、同時にテレビを作るスタッフにとっても、あまりにも魅力的な素材だといえるだろう。

 そしてこの「朝までハシゴの旅」は、人見知りだった平愛梨が心を開くまでの、一晩の成長物語として描かれる。終盤、中島みゆきの「地上の星」をBGMとして選びながら「悪女」の話に持ち込み、歌詞の中から最初に訪れた居酒屋「マリコの部屋へ」とつなげるあたりには、ディレクターの意地と本気が見える。素材に対して全力で向き合おうとする、それは料理人にとってのプライドだろう。

 「天然」とは、あるいは「おバカ」とは、多くの場合しっかりした成人に対しての欠けている者、という存在である。そこには直線上の優劣がある。だが平愛梨の場合は、むしろその直線自体をねじ曲げ、無効化する。前述したが、何をしでかすか分からない動物だったり、あるいは赤ん坊に近い。彼女は彼女の世界を持っている。そのルールに対して正しく生きているわけで、だから平愛梨へ抱く感情は劣った者に対する優越感ではなく、むしろ愛情であり、あるいは時として羨望でさえある。

「朝までハシゴの旅」で平愛梨は、その日に初めて出会った酔客に話しかける。

「ニコニコされててイメージ良いじゃないですか」

 酔客は、少し戸惑ったように、だがしっかりと、平愛梨に答える。

「あなたを見れば、みんなそうなります」

 平愛梨は、正しく生きている。その生き方が他人とは少し違ったものだとしても。それが分かるから、伝わるからこそ、彼女は愛され、ときに人々の憧れとなる。平愛梨を見れば、みんな、そうなってしまうのだった。

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