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AKB48『選抜総選挙』は“変化の季節”を迎えた? 各メンバーの参加スタンスから考える

 一方で、16位に入り選抜を勝ち取った武藤十夢は、スピーチでその「祭り」としての見方をはっきりと否定し、上位に食い込んだメンバーがチャンスを掴むという、この総選挙のシンプルかつ重要な役割を強調してみせた。それは総選挙をステップアップの機会にしてきた武藤にとっては自然な視野なのだろう。彼女の迷いのない清々しいスピーチは、選抜総選挙を「祭り」というクッション的な言葉のみでまとめてしまわない説得力があった。このようなメンバーごとの総選挙に対する意味付けはまた、各々のグループ内での、あるいはキャリア途上での現在地を浮き彫りにするものでもある。ようやく主役の一人になる足がかりを掴みつつあるメンバーにとっては、今も昔もこのイベントは勝負をかける重要な大一番である。選抜に食い込み、あるいはトップをうかがおうとするメンバーたちの、己を前面に出す野心的なスピーチもまた印象に強い。「戦い」としての機能は、当然ながらいまだ有力なものである。

 しかし何より、総選挙はAKB48グループの「顔」が現在、どのような形で存在しているのかを指し示す場所である。今年の1~3位は、指原莉乃、柏木由紀、渡辺麻友の3人だった。形式の上ではもちろん、昨年2位だった指原が2年ぶりにトップに返り咲いたことが刻まれるべき結果である。しかし実際にはこの上位3人にとって、数字上の結果は何かを絶対的に決定づけるものではないのではないか。各人がそれぞれを認め合いながら共闘しているような姿に、そんなことを感じた。

 AKB48グループがある意味で日本を取り巻くような超巨大規模になった今、そこでトップをとることは、一組織の中で首位に立つだけの話ではなくなっている。決して小さくない影響力を持つこのグループをいかに位置づけ、維持していくのか。開票イベントでの彼女たち3人の姿勢には、そこまでを含んだ視野が備わっているように見えた。スピーチの際、それぞれに歓喜や悔しさを忍ばせながらも、3人には順位に対する執着がさほどないように見えたことが印象的だった。指原、柏木、渡辺の3人は、それぞれの仕方でアイドルに愛着を持ち、「アイドル」というジャンルに自覚的なメンバーたちである。この3人は個人のパフォーマーとしても、随所にクレバーさを発揮して各々の「アイドル」像を模索し、体現しながら現在のポジションを築いている。ただしまた、48グループの中枢メンバーとしての彼女たちは、個人の数字や序列以上に、この巨大なアイドルグループをどう担い、社会に対してどう見せていくのかを常時意識しているようにみえる。つまり、総選挙という組織の内側のダイナミズムの上では互いに戦うことにはなっているが、より長期的な目標としては、組織を背負って歩んでいくという同一の使命を自覚的に共有しているのではないだろうか。

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