「私は男の公衆便所」売春婦の尊厳を問うた【池袋の怪事件】とは? ~銀座ママ枕営業裁判との比較~
■事件発覚後、驚きの判決が下される
ホテルの従業員が駆けつけた時、香澄は全裸だった。島村は、出血多量で死亡したことが運ばれた病院で確認された。香澄は警察に現行犯逮捕される。裁判が始まると、法廷には有力な証拠が提出された。島村がセットしたビデオに一部始終が映っていた。危害を加えてきたのは島村であり、香澄がナイフを手に取ったのは正当防衛である、と香澄の弁護人は無罪を主張した。
検察は懲役5年を求刑し、こう主張した。
「売春契約をした以上、性的自由及び身体の自由は放棄されており、保護に値しない。客によっては危険のあることも知っていたはず。被告人は命の危険もなかったのに、憤怒のために殺意を持って被害者を刺殺した」
12月18日に出た判決は、懲役3年。判決はこう述べた。
「女性自らが招いた危険という面もあり、被害者を死に至らしめたのは過剰防衛だった」
彼女は控訴し、高裁判決は昭和63年6月に下された。
「被害者からの暴行、脅迫や異常なまでのわいせつ行為を耐えがたく感じたのは無理からぬことで、被告人が本能的にナイフを振って犯行に及んだことは、同情に値する」として、有罪は変わらなかったが、執行猶予が付いた。それでも「売春婦と一般婦女子との間では性的自由の度合いが異なる」として、正当防衛は認められなかったのだ。今この事件が起きていたら、一体どんな判決が出ているのだろうか?
(文=深笛義也)
■深笛義也(ふかぶえ・よしなり)
1959年東京生まれ。横浜市内で育つ。18歳から29歳まで革命運動に明け暮れ、30代でライターになる。書籍には『エロか?革命か?それが問題だ!』『女性死刑囚』『労働貴族』(すべて鹿砦社)がある。ほか、著書はコチラ。
※日本怪事件シリーズのまとめはコチラ
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