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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.328

児童虐待、学級崩壊、独居老人にどう対処する? 『きみはいい子』の教師が考えた風変わりな宿題

kimihaiiko03.jpg学級崩壊してしまった岡野のクラス。一人ひとりは“いい子”のはずなのに、集団化するとグレムリンのように手に負えなくなってしまう。

 岡野のクラスの子どもたちのほとんどは幸せだ。家に帰れば、ぎゅっと抱きしめてくれる家族がいる。でも中には給食だけを楽しみにしている神田くんのように、ぎゅっとしてくれる家族がいない人もいる。家に帰ってもぎゅっとしてくれる家族がいない場合は、大人も含めてどうすればいいのか。すっかり流行らなくなったがベルマークを集めるように、家族ではない誰かから優しくされたり、親切にされた思い出を少しずつ貯めていくしかない。ひとつひとつは些細なことでも、小さな善意や親切心が胸いっぱいに貯まるころには、サイアクな状況を脱することができるはずだ。「こんにちは、さようなら」のエピソードでは、認知症が始まった独居老人・あきこ(喜多道枝)と発達障害を抱えた少年・弘也(加部亜門)との交流が描かれる。あきこと弘也は血縁関係で結ばれているわけではなく、登下校時に弘也が家の前を掃除するあきこに「こんにちは、さようなら」とあいさつをするだけの関係だ。クモの糸のようにとても細い繋がりだが、ひとり暮らしの長いあきこにとっては大きな支えとなる。家族でなくてもいい、恋人でなくてもいい。誰かに優しく接してもらった温かい記憶があれば、人間はそこそこ生きていけるのではないだろうか。
(文=長野辰次)

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『きみはいい子』
原作/中脇初枝 脚本/高田亮 監督/呉美保 出演/高良健吾、尾野真千子、池脇千鶴、高橋和也、喜多道枝、黒川芽以、内田慈、松嶋亮太、加部亜門、富田靖子 配給/アークエンタテイメント 6月27日(土)よりテアトル新宿、丸の内TOEI、立川シネマシティほか全国ロードショー 
(c)2015「きみはいい子」製作委員会
http://iiko-movie.com

最終更新:2015/06/26 18:00
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