【必読】恐怖の冤罪 ― 検察の証拠隠蔽と闘った男の1年7カ月、全告白!
再尋問に際し、内田さんは入念な準備を行った。特に力を入れたのが、検察に対する「さらなる証拠の開示請求」だ。
筆者もこの裁判で初めて知ったのだが、検察というのは、集めた証拠をすべて開示するわけではないようだ。どれをオープンにするかは検察の胸三寸。つまり、内田さんを有罪にしたい検察にとって、そのシナリオを邪魔する証拠は開示しなくてもいいことになっている。
もちろん、内田さんが自力で収集できる証拠もある。1審で提出したSuicaの履歴や通っていたジムの入退出記録などがそれだ。しかし、後藤や小原の通話記録やメール履歴など、捜査権を持つ検察にしかアクセスできない証拠もある。収集できる範囲の差は歴然である。不公平に感じるが、これが刑事裁判の仕組みなのだ。
さらなる開示請求とは、要するに「検察にはまだオープンしてない証拠があるはずだから出しやがれ!」ということ。内田さんの請求内容を要約すると、こうだ。
自分は後藤に犯行の指示などしていないのだから、他に真犯人がいるはず。そして、後藤はそいつと連絡を取り合っていたはずだから、通話やメールの履歴が残っているに違いない。また、自分は小原に会ったこともない。だから、小原は他の誰かに指示されているはずだ。だとすると、逮捕されたとき、警察の取り調べで真犯人の似顔絵を残しているに違いない──。
内田さんはこういった推理を立て、「後藤が使っていた携帯電話の通話履歴とメール履歴」「小原の証言に基づいて作成された似顔絵」を始めとする様々な証拠の開示請求を行った。そして、この読みは見事に当たり、履歴と似顔絵が新たに開示された。
これを武器に、再尋問では証人への激しい追求が行われた。1審同様、後藤と小原は「覚えてない」「多分そうだった」といった曖昧な表現ですっとぼけようとした。しかし、新たな証拠によって逃げ道はふさがれていた。
さらに、矛盾だらけの証言に業を煮やした小川裁判長が、自ら証人たちに質問を投げかけるという異例のひと幕もあった。その舌鋒は鋭く、後藤に至っては「すみません。嘘をついてました」と白状。自ら“闇バイト”を斡旋するサイトにアクセスし、首謀者が内田さんではないことを認めたのだ。
小原による似顔絵も、とんでもないシロモノだった。これは下記の画像を見てもらえば一目瞭然だが、そこに描かれていたのは内田さんとまるで異なる人間だったのだ。
検察は、これをわかった上で隠していた。内田さんは1審でも「似顔絵があるはずだ」と主張したが、検察は「ない」と明言していた。しかし、結果的には警察の取り調べ調書に添付されていたことが判明。検察が証拠の隠蔽を狙っていたことは明らかだ。
かくして、有罪の根拠となっていた後藤・小原の「供述」はもろくも崩れた。内田さんの執念が実った瞬間だった。
サイゾー人気記事ランキングすべて見る
イチオシ記事