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現役最高齢!? 92歳のおじいさんが営む、自宅系古書屋「青空書房」に潜入

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 出征していた坂本さんは終戦後間もない1946年から闇市で古本を売り始めた。少年の頃から本の虫だったという坂本さんにとって、古書店はまさに天職だったのだろう。翌47年には、大阪の天満に「青空書房」を開業。以来、67年間にわたってお店を営んできた。

 天五中崎通商店街に移転した「青空書房」は、坂本さんの体力的な問題もあり、2013年12月をもって惜しまれつつ閉店した。しかし、翌年になって自宅の一部を使う形で営業を再開し、今に至るという。

「大阪でも関東でも、一代で現役でやってる古書屋では一番古いかもしれません」とニッコリ笑う坂本さんに、なぜ一度お店を閉めつつも営業を再開されたのかを聞いてみると、

「私は本人間で、とにかく読書が好きなんです。せやからねぇ、やはり死ぬまで本に囲まれていたいんです。愛しい本と一緒にいたい。この家は私の生まれた場所なんです。そしてここが終の棲家ですねぇ」

 自宅ながら、在庫は2,000冊近いという。

「ここは通りに面していないから、通りがかりの人は来ないです。本屋は通りがかりの人が来てこそのものなんやけど、ありがたいことに私のファンだという人が一日に何人か来てくれます。中にはお帰りになった後、玄関を見たら本を置いていってくれる人もいてます」

「青空書房」は作家にも愛されてきた店で、筒井康隆や山本一力といった小説家は古くからの常連客であり、坂本さんに言わせれば「親類同然」の関係なのだとか。

「ありがたいことでねえ。お店をやってたら、人と人とのめぐり合いがあるんです。筒井さんや山本さんとも、身分関係なく、人間として関係させてもらっています」

 今でも5冊ほどの小説を同時に読んでいるという坂本さん。その読書歴の中からおすすめを教えてもらうと、

「私は文学が中心ですけどねぇ、ずっと好きで読んでいるのは『古事記』。あとは、時代物で山本周五郎、藤沢周平、池波正太郎はずーっと好きです。田辺聖子さんの本も好きです。外国文学は、最近ご無沙汰ですけど」

 特に池波正太郎の小説には、思い入れが深いという。

「池波さんの文学は、悪人の中にも善があって、正しいやつにも心の隅にしょうもない悪がある、それをきちんと見て描いているんです。池波さんは若い頃に好き放題して、よう遊んでたそうです。そやから人間がわかるんだと思いますねぇ。小説は弱い人、そして何をやってもうまくいかない人のためにあるんだと私は思うんです」

「青空書房」の店内には、坂本さんの手による味わい深い絵や文字が壁の至るところに貼られている。その多くは「食事や通院などでお店をちょっとの時間空けます」といった、お客さんへのメッセージ。

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