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デモに何万人集まっても世の中が変わるワケない! 本気で革命をしたい人のための2冊

shishoutoshitenofashizumu08.jpg『思想としてのファシズム』(彩流社)

 気がついたら、どこかでデモが行われるのも当たり前の時代になってきた。

 脱原発・安保法制・反ヘイト・行動する保守等々、思想は無数で催しも全国津々浦々で星の数ほど。新聞やテレビでも、そうした報道を目にすることは多い。

 けれども、社会のさまざまな問題に興味はあっても、そうした活動には背を向けている人も多いのではなかろうか。就職ができなくなるとか、個人的な問題で背を向けているのではない。

「あんなぬるいデモやらなにやらで、世の中が変わるはずなどない」

 そう。今の「社会運動」と呼ばれるものは、ものすごくスケールが小さい。護憲か改憲かというテーマは大きく見えるけど、単なる国民国家の内輪の話ではないか。

「そんなセコイことやってられるか! 俺たちが変えるのは世界なのだ」

 世界革命か最終戦争かは知らないけれど、巨大なオトギバナシを夢想する人々にとっては、憤懣やるかたない時代。

 しかし、いよいよデモなんてやったところで、なにも変わらないという真実に目覚める人が増えているのか? 本気で世界を変える意志を語る本が相次いで刊行されている。

 その筆頭が千坂恭二『思想としてのファシズム「大東亜戦争」と1968』(彩流社)だ。

 この本は、10代でアナキズムの思想家として注目を浴びた千坂氏の43年ぶりになる新著だ。「中野正剛と東方会」に始まり、さまざまな視点から、今では多くの人々が「絶対悪」だと思い込んでいるファシズムを捉え直そうとする本書。中でも「世界革命としての八紘一宇──保守と右翼の相克」では、天孫降臨から神武天皇の東征を語り、こう記す。

<驚くべきことに神武の東征革命軍は、ニニギ的外部注入論によって組織され、畿内大和の保守勢力を制圧し、在地の改革国家ではなく、外部による革命国家を樹立し、八紘一宇としての世界革命を志向したのである。>

 つまり、日本は建国以来、世界革命を目指す革命国家だというのである。なんと痛快なことか! 膨大な知識を用いて記される文章は、千坂氏を知らずに読む人にとっては相当の決意がなければ大変な作業かもしれない。そんな人にはまず巻末に収録されたロングインタビューから読むことをおすすめしたい。ここでは千坂氏の生の声で、さらに鋭い切れ味を感じることが出来る。大東亜戦争の本質について「アングロサクソン帝国主義秩序の粉砕です。日本人は戦後洗脳されたのです」と語り「戦後の皇室は、敵の捕虜になっているようなものです」とまで言い切る千坂氏は、現代において革命家は現れうるか? という問いにも強烈な一言を放つ。

<今は革命家というのは犯罪者と病人以外には存在しないかもしれません。(中略)何かわけわからないけれども現代が気に入らない、もやもやしている、くそう、許せない、レンタカー注文して、秋葉原で人をひいてやろうと、こういう計画性のない人間にしか無理なんです。>

 一連の文章の中で千坂氏は「立ち上がろう」とも「革命を起こそう」とも鼓舞したりはしない。しかし、行間からは選挙で選ばれたり、論壇で有名になった者たちが「影響力」を持ち体制内での改革に終始してしまうことへの批判がにじみでているような気がする。ページをめくるごとに既存の体制が幻想に過ぎないという思いは明確になり、読む者を「世の中をひっくり返してやろう」という決意へと導いていく。そして、そうした決意を持っていても間違いじゃなかった。異常者・病人よばわりするなら、勝手にしやがれ! という信念までもが生まれていくのである。

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