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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.338

名台詞「お前はすでにヤッている」が脳に刺さる! 多部未華子がエロきゅんな『ピース オブ ケイク』

pieceofcake03謎の多い女・成田あかり(光宗薫)は物語のキーパーソン。かなり濃厚な濡れ場で存在感を示した光宗も、女優として露出が増えていきそうだ。

 トモロヲ監督といえば、監督デビュー作『アイデン&ティティ』(03)が強い余韻を残した。1990年代前半のバンドブームに踊らせられたロック青年・中島(峯田和伸)を主人公に、自分が本当にやりたいことをやり続けることと食べていくことを両立させる難しさを切実に描いた。みうらじゅん原作の『アイデン&ティティ』が男目線で高円寺周辺のサブカルシーンで右往左往する若者たちの姿を捉えたように、ジョージ朝倉原作の『ピース オブ ケイク』は女の子目線で、より現代の中央線文化を描写する。『アイデン&ティティ』の中島の彼女(麻生久美子)は男にとっての“理想のミューズ”だったが、『ピース オブ ケイク』の志乃は生身の25歳の女の子だ。当たり前のことだが、男だけでなく、女性もまた自己表現欲や野心を抱えながら、恋や仕事に懸命に生きていることに気づかせられる。男と女の違いは、どうやら恋愛に関する発火温度と燃焼速度がビミューに異なるという程度のものらしい。

 物語の後半、『アイデン&ティティ』の主人公・中島を演じた峯田和伸が現われ、恋に億劫になっている志乃をギター片手に挑発する。恋愛は出口の見えない不思議な迷宮だ。原作者が異なるはずの『アイデン&ティティ』と『ピース オブ ケイク』がいつしか迷宮の中でリンクしている。ギターをかき鳴らす峯田の歌声に呼び寄せられ、意外な人物が志乃の前に姿を見せる。志乃にとってストライクど真ん中の男だったが、痛い恋愛を経験した志乃はもう状況に流されるだけの受け身の恋愛からはきっぱりと卒業していた。志乃の前に待っているのは、絵に描いたような理想の恋愛ではなく、もっとディープでより激しい大人の恋愛だった。
(文=長野辰次)

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『ピース オブ ケイク』
原作/ジョージ朝倉 脚本/向井康介 監督/田口トモロヲ 音楽/大友良英 主題歌/『ピース オブ ケイク 愛を叫ぼう』加藤ミリヤ feat.峯田和伸 
出演/多部未華子、綾野剛、松坂桃李、木村文乃、光宗薫、菅田将暉、中村倫也、安藤玉恵、森岡龍、山田キヌヲ、宮藤官九郎、柄本佑、峯田和伸 
配給/ショウゲート PG12 9月5日(土)より新宿バルト9、渋谷シネマライズほか全国ロードショー
http://pieceofcake-movie.jp

最終更新:2015/09/03 17:00
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