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構成作家・相沢直の“スナオなドラマ考”

なぜこの9人と一匹は、これほどまでに愛おしいのか?『ど根性ガエル』第9話

 第9話、福男を決めるレースの直前。ひろしとゴリライモと五郎がライバルとしてやり合っている。ひろしの母ちゃんと京子ちゃんの間でも、密かに女同士の戦いが始まっているようだ。よし子先生の靴はスタート早々脱げてしまうが、肝心の梅さんは事前の練習中に骨折していて役には立たない。町田校長は老体に鞭打ってスターターを務め上げ、京子ちゃんのおばあちゃんはうれしそうにシンバルを叩く。誰一人欠けてはいない。誰一人欠けてはならない。そしてピョン吉は、笑っている。

 見事レースに優勝し、翌朝目覚めたひろしは、シャツからピョン吉がいなくなっていることに気付く。町中探しまわって家に帰ったひろしは、ピョン吉が去ったそのシャツを着て母ちゃんに言う。「飯にしようぜ、母ちゃん」と。

 祭りには、いつものみんなが集まっている。誰もがピョン吉の不在に気付いているが、そのことを口にはしない。「おうゴリライモ、ゴリライモだね、相変わらずお前さんは」「よう京子ちゃん、相変わらずかわいいね」とはしゃぐひろしに、ゴリライモが声をかける。

「お前、相変わらずひろしだな」

 このセリフにもまた、16年分が詰まっている。あるいはそれよりずっと昔から、幼いころからひろしを見てきたゴリライモの思いが「相変わらず」というたったひとつの言葉に込められている。言葉にしなくたってわかってしまう。そして、そのときドラマの登場人物は、我々視聴者と同じ地平に立つ、生きた人間としてそこにいる。彼らが声を上げて神輿をかつぐとき、誰を想っているのかがわかってしまう。だからこそこの9人と一匹はこれほどまでに愛おしく、そしてだからこそ、別れはこれほどまでに寂しいのだ。

 次回、『ど根性ガエル』は最終回を迎える。待ち遠しいと思うと同時に、その日が来なければよいのにと思ってしまうのは、おそらく筆者だけではないだろう。
(文=相沢直)

●あいざわ・すなお
1980年生まれ。構成作家、ライター。活動歴は構成作家として『テレバイダー』(TOKYO MX)、『モンキーパーマ』(tvkほか)、「水道橋博士のメルマ旬報『みっつ数えろ』連載」など。プロデューサーとして『ホワイトボードTV』『バカリズム THE MOVIE』(TOKYO MX)など。
Twitterアカウントは@aizawaaa

最終更新:2015/09/14 21:00
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