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タブーを突破する男たちの覚悟──映画『木屋町DARUMA』

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 榊英雄さんの映画監督としての活動を知ったのは、もう15年も前のことだった。

 出会いは当時、企画プロデューサーとして働いていたロフトプラスワン。若松孝二監督や北村龍平監督を招いた映像作品の上映イベントで榊監督の短編作品が紹介され、その映像センスと俳優陣の演技力に目をみはった記憶が今も残っている。

 いずれ、この若手俳優は監督業に進出するのではないかと予感させたが、映画『あずみ』の長戸役を観て魅力的な俳優が出てきたと感心した。

 以降、榊さんの俳優としての活躍は周知の通りだが、同時に時間的な拘束が長期にわたる監督業への進出は厳しいのではないかと思いもした。

 それから数年後、日本テレビ開局55周年記念番組『ヒットメーカー阿久悠物語』にて出演シーンは別なれど、榊さんと共演する機会に恵まれた。

 演出は映画監督の金子修介さんで、榊さんは振付師の土居甫役を熱心に演じられ、筆者は作曲家の中村泰士役を演じた。その後も、桜庭一樹さんの原作小説を映画化した角川文庫創刊65周年記念作品『赤×ピンク』にて再び共演を果たしたのだが、これまた前回と同様に出演シーンがかぶらずクランクアップ。

 打ち上げの席で近況報告をする程度の間柄ながら、細やかな気遣いのできる叩き上げの人物であると実感している。

 アクション物から人間ドラマまで様々な役柄を数多く演じてこられた榊さんだが、近年では映画監督としての評価が著しい。

 舞台挨拶前、楽屋へと榊さんを訪ねて挨拶を交わした際、敢えて俳優と監督業の両立は難しいのではないかという疑問を投げかけてみたわけだが、

「そんなことはないですね」と即答され、どちらか一方に偏ることなく仕事を続けて行きたいという明確な意思を語ってくれた。

 そして最後に一言、「呼んでいただければ、もっともっと俳優としてがんばりますよ」と力強く訴えたのだが、筆者には榊さんのそんな気持ちが痛いほど理解できた。

 かつて、松田優作は自ら監督した映画『ア・ホーマンス』の完成後、取材記者から「今後、優作さんの肩書は俳優? それとも監督? どちらです?」と質問され、「自分は映画人ですから」と答えて質問者を黙らせてしまったというエピソードを映画誌で読んだ記憶がある。

 ハリウッド映画史を紐解けば、チャールズ・チャップリン、オーソン・ウェルズ、そしてクリント・イーストウッドに至るまで、そのキャリアは俳優としての名声を凌ぐほど、映画監督としての揺るぎない地位を築きあげたのだ。さらにマーロン・ブランド、ロバート・デ・ニーロといった稀代の名優たちも、そのフィルモグラフィーに監督作品を残してきたことを、どうか記憶に留めて頂きたい。

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