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お笑い評論家・ラリー遠田

『キングオブコント2015』評 審査システムの変化と「物語型コント」の行く末を見る

IMG_5198.jpg撮影=後藤秀二

 2015年10月11日、コント日本一を決める『キングオブコント2015』が行われた。決勝戦は予選を勝ち抜いた10組の芸人によって争われ、見事に優勝を果たしたのはコロコロチキチキペッパーズだった。結成4年目でダークホースといわれていた2人が、下馬評を覆して栄冠を手にした。

 これまでの『キングオブコント』では、「物語型」のコントが高く評価される傾向にあった。これは、準決勝で敗れた芸人100人による審査が導入された2009年大会で東京03が優勝したときから始まったものだろう。緻密に作り込まれたストーリー性のあるコントを、隙のない演技力で演じきる。たった4分のコントの中に映画1本分に相当する起承転結を詰め込み、観客を自分たちの世界に引きずり込む。そういう芸人がこれまで活躍することが多かった。13年優勝のかもめんたる、14年優勝のシソンヌなどは、典型的な「物語型」のコントを得意とする芸人だ。

 また、10年準優勝のピースもそのタイプに該当する。ピースの又吉直樹は、物語型のコントを演じるだけにとどまらず、その有り余る才能を生かして小説を書き上げ、芥川賞作家にまで上り詰めた。「物語型」の面白いコントを作るのは一筋縄ではいかない。構成力、発想力、演技力など、コント芸人としての総合的な実力が求められる。そういう芸人こそが、同じ立場にある100人の芸人審査員にとって「俺たちのNo.1」にふさわしい存在だと思われてきたのだ。

 だが、2015年大会でこの審査システムがガラッと変わった。予選で敗れた芸人100人による審査の代わりに、松本人志、さまぁ~ず、バナナマンの5人による審査が行われることになったのだ。新しいシステムを取り入れた初めての大会ということで、会場にはどうしてもピリピリした緊張感が漂ってしまうことになった。

 審査員5人は、審査に公正を期すという意味もあり、普段バラエティ番組に出ているときのように軽快に冗談を飛ばしたりはしない。あくまでも真面目に誠実にネタを見守るだけだ。そんな彼らのすぐ後ろに観客が座っている。観客もこの空気に飲まれて、どうしても気軽に笑いづらくなってしまう。

 いざ本番が始まると、この日の舞台は多くの芸人にとって針のむしろとなった。予選でウケたはずのネタがなかなかウケない。自信のあったくだりがことごとく上滑りしてしまう。審査員の点数も低い数字にとどまり、重苦しい状況がしばらく続いた。この空気をはねのけて大きな笑いを起こしたのは、ロッチ、バンビーノ、コロコロチキチキペッパーズの3組だけだった。

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