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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.345

「あれまッ」と驚くシャマラン節がたまらない!“無縁社会”が生み出した都市伝説『ヴィジット』

thevisit03いつも鍵が掛けてある納屋の中を覗くと、おじいちゃんが銃を口にくわえようとしていた。おじいちゃん、それ胃カメラじゃないよ!

 恐怖の中に笑いが混在するシャマラン作品の味わいが、本作では今までになく顕著になっている。両親の離婚以来、情緒不安定ぎみで潔癖症になっていた弟のタイラーだが、実家滞在中にあまりにも衝撃的なショック療法を体験することに。この洗礼によって、タイラーは潔癖症をウンよく克服する。観ている我々は恐怖におののきながらも、つい吹き出してしまう。恐怖回路と笑いの回路の往復で忙しい。客席で唖然とし、また笑っているうちに、現代のヘンゼルとグレーテルは瞬く間に成長していく。

 ドアの向こう側では、未知なる恐怖が待ち受けている。だが、姉のベッカにはビデオカメラ、弟のタイラーにはラップという武器がある。若い姉弟はそれぞれ表現手段を持っていることで、自分たちが置かれている状況を冷静に客観視し、パニックに陥るのを防いでいる。果たして、この世界は信じるに値するものなのか。シャマラン監督が描く世界は、とうてい信用できないし、理想の世界とは言いがたいものだ。それでも少年少女たちは成長を遂げていく。トラウマを抱えた子どもたちが恐怖の壁を乗り越えて、広い世界へと向かっていく。これもまたシャマラン監督が初期作品『翼のない天使』(98)や脚本提供作『スチュアート・リトル』(99)の頃から、ずっと描き続けているテーマだろう。
(文=長野辰次)

『ヴィジット』
製作・監督・脚本/M・ナイト・シャマラン 
出演/キャスリン・ハーン、ディアナ・デュナガン、ピーター・マクロビー、エド・オクセンボールド、オリビア・デヨング 
配給/東宝東和 10月23日(金)よりTOHOシネマズみゆき座ほか全国公開
(C) Universal Pictures.
http://thevisit.jp/

最終更新:2015/10/22 17:17
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