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週刊!タレント解体新書 第36回

プロレスラーがバラエティで決して負けない3つの理由 日テレ『ダウンタウンDX』(11月12日放送)を徹底検証!

(2)力強いタッグパートナーがいる

 プロレスには1対1のシングルマッチではなく、複数のレスラー同士が戦うタッグマッチという形式もある。その際、どんなタッグパートナーがいるかが重要になってくるわけだが、『ダウンタウンDX』では、その意味で最強のタッグパートナーがゲストに配置されていた。プロレスファンを代表してプロレスのエピソードを視聴者に対して語れる、勝俣州和がその人である。

 勝俣が重要なのは、プロレスマニアではなく、あくまでもプロレスファンとしてそこにいるという点だ。マニアであれば知っていて当たり前の情報を、プロレスファンとして、新鮮に語ることができる稀有な人物である。この日も、かつて長州が放った「テメエが死んだら、墓にクソぶっかけてやる!」という名言を紹介。プロレスマニアなら誰もが知っているこの名言だが、もちろん多くの出演者や視聴者はマニアではない。この発言を新鮮なものとして聞かせることで、長州の無茶苦茶さをしっかりと視聴者に伝えている。

 かつ、タッグパートナーは、実は勝俣だけではない。勝俣をこの日のゲストに呼んでいるスタッフもまた、タッグパートナーだといえるだろう。基本的にプロレスファンはどの世界にも潜んでおり、プロレスの素晴らしさを世間に対して届けようと企んでいる。長州をただの面白おじさんとして扱うのではなく、さまざまな意味において、プロレスラーとしての長州の面白さを引き出したいと思うからこそ、スタッフが勝俣をそこに配置しているのだろう。その意味で、スタッフをも巻き込んだ優秀なチームプレイが、ここでは発揮されているのだ。

(3)オリジナルのフィニッシュホールドを持っている

 プロレスの試合においては多くの場合、プロレスラーがオリジナルのフィニッシュホールドを繰り出して勝敗が決定する。誰もが使えるような技ではなく、そのプロレスラー独自のオリジナルの技がそこにはある。プロレスラーは、ただプロレスをやればいいというわけではない。自らの人生や個性や生き様を象徴するようなファイトスタイルを自ら選び取り、それに見合ったフィニッシュホールドで相手から勝利を奪うというのが名プロレスラーだといえる。

 この日の『ダウンタウンDX』の最後のオチ、いわばフィニッシュホールドを決めたのは、長州その人だった。遠征中の宿泊先で本当にあった怖い話を披露する長州。部屋のカーテンの上のほうを見たら、本来いるはずのない男性と女性が向かい合っている……。そこまで話して、ローラから「見たの?」と問われると、「いやボク(が見たん)じゃないんです」と答え、なんだそれは、という雰囲気で笑いが起こる。そこで決めるのが長州だ。隣にいる真壁に対して「俺、滑舌悪いか?」と一言。まさしく大団円といえるだろう。

 プロレスラーは、自らの人生や個性や生きざまがすべてそのまま武器になるという特殊な職業である。昨今、滑舌が悪い人として扱われることの多い長州だが、それを逆手に取っての見事なフィニッシュ。一切満足げな顔を見せることなく、当たり前の仕事をして帰って行く長州の姿は、やはり昭和のレジェンドのそれであった。

 結局のところ、バラエティ番組もプロレスも、基本は一緒である。そこには論理的なテクニックとサイコロジーがあり、普段からプロレスという場でその能力を研ぎすませているプロレスラーが、バラエティ番組で面白くないはずはないのだった。天龍をはじめとして、これからも昭和の時代を築いたプロレスラーがリングを後にしていくのだろう。だが、そのイズムは確かに継承されていく。再びプロレスブームを巻き起こすのは、昭和のレジェンドから魂を受け継いだ、これからのプロレスラーに違いない。

【検証結果】
 ここでは昭和のレジェンドである長州力を取り上げたが、現在のプロレスラーは多種多様な個性を持っているため、場面場面でしっかりと結果を残している。立命館大学出身の棚橋弘至はクイズ番組に呼ばれることも多く、真壁刀義はその無骨な顔に似合わず、スイーツが好きという個性を生かしている。また、飯伏幸太の天然キャラは視聴者の評価を確かに勝ち取っているし、スーパー・ササダンゴ・マシンに至っては「近年のプロレス、幅広がってる説」を披露し、プロレス自体にプロレスラーが言及するという離れ業を成し遂げている。個性にあふれ、百花繚乱ともいえる現在のプロレス業界。隠し球もまだまだ多数存在しているため、プロレスラーがバラエティ番組のある部分を席巻するという時代は、思いのほか早く到来するのかもしれない。
(文=相沢直)

●あいざわ・すなお
1980年生まれ。構成作家、ライター。活動歴は構成作家として『テレバイダー』(TOKYO MX)、『モンキーパーマ』(tvkほか)、「水道橋博士のメルマ旬報『みっつ数えろ』連載」など。プロデューサーとして『ホワイトボードTV』『バカリズム THE MOVIE』(TOKYO MX)など。
Twitterアカウントは @aizawaaa

最終更新:2015/11/17 14:00
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