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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.350

安楽死マシンを発明したジイサンに注文が殺到! 尊厳死コメディ『ハッピーエンドの選び方』

happyend_03ヨケスケルの妻レバーナは認知症が徐々に進行していた。長年連れ添ってきた夫の顔が分からなくなっていくことがレバーナには辛い。

 Good Deathという短い言葉の響きが何とも耳に残る。人間の生を肯定的に受け止めるのなら、その着地点である死を忌み嫌い、切り離して考えるのはおかしなことだ。自分に与えられた人生を懸命に生き抜いた人間が、Good Deathを望むのは然るべきことだろう。

シャロン「米国のオレゴン州では尊厳死が合法となっていて、末期状態の患者は医者に致死量の薬を処方してもらうことが可能なんだ。でも実際には処方薬は服用しない人がほとんど。自分の人生のエンディングを病気や病院側の都合ではなく、自分自身で決められることに多くの人は安心できるんだ」

タル「自分が愛する人たちに自分の想いをきちんと伝えて、それから愛する人たちに見守られて旅立つことができれば、すごく幸せなことじゃないかしら。それは神さまからの祝福であり、天からの贈り物だと思うわ」

 2人の話を聞いているうちに、自分が最近亡くした近しい人の顔が思い浮かび、ふと目頭が熱くなってしまった。その人はいつもニコニコと笑っていた。最期は苦しまずに旅立つことができたのだろうか。顔を上げると、タル&シャロン監督が「大丈夫?」と心配そうな表情で近くにあったテイッシュを手渡してくれた。逢ってからまだ30分しか経っていない日本人の記者に、そんな気遣いができる監督たちがウィットたっぷりに完成させたコメディが『ハッピーエンドの選び方』だ。

 映画のラストシーン、長年生活を共にしてきたヨヘスケルとレバーナが最期に交わす言葉はとても短く、そして温かい。恋人たちにとって最高のエンディングだろう。
(文=長野辰次)

happyend_04

『ハッピーエンドの選び方』
監督・脚本/シャロン・マイモン、タル・グラニット 出演/ゼーブ・リバシュ、レバーナ・フィンケルシュタイン、アリサ・ローゼン、イラン・ダール、ラファエル・タボール 
配給/アスミック・エース 11月28日(土)よりシネスイッチ銀座ほか全国順次ロードショー
(c)2014 OIE FILMS/2-TEAM PRODUCTIONS/PALLAS FILM/TWENTY TWENTY VISION.
http://happyend.asmik-ace.co.jp

最終更新:2015/11/27 17:00
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