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構成作家・相沢直の“スナオなドラマ考”

「ガウディ計画編」は再生を描いた──『下町ロケット』が掲げた“TBS品質”の矜持

 原作では、こういったやりとりがあって、佃製作所が「ガウディ」の開発に加わることになる。小説であれば、不自然さはない。小説『下町ロケット』では夢を追いかけるというテーマだったが、『下町ロケット2』ではそれだけではなく、せざるを得ない理由によって仕事をする者もいるというのがテーマになっているからだ。それは医療という新しい分野に関わることになる佃製作所が越える、ひとつの壁でもある。

 これに対して、ドラマ『下町ロケット』の第6話は、原作にはなかった場面を付け加えている。それはあくまでも全10話のストーリーとして見せるために、原作『下町ロケット』と『下町ロケット2』をつなぐ役割を果たしている。具体的には、原作と同じく「仕事っていうのはいろいろですね」「人の数だけ仕事をする意味がある」と佃製作所の唐木田(谷田歩)が言う、それを聞いた航平は、同意はしながらも、根底は同じなんじゃないかと伝え、こう口にする。

「(日本が本格的なロケットを手掛けるようになった)最初のきっかけは、1959年に起きた伊勢湾台風だといわれています。死者、行方不明者、5,000人以上。未曾有の大災害でした。そういう被害を二度と出さないために(略)ロケット開発はこんにちに至るまで進歩を続けてきました」

 そして桜田に対して「(人工弁を開発することが)いつか夢だと言える日が来てほしい」と告げるのだった。このエピソードを付け加えることによって、ドラマ『下町ロケット』の第6話以降はそれまでのストーリーと分離することなく地続きのものとなり、さらには第6話以降のテーマをも指し示している。

 ドラマ『下町ロケット』の第6話以降、「ガウディ計画編」は、つまり再生の物語である。原作にもそういった描かれ方は多くあるのだが、ドラマでは再生というテーマを強く打ち出している。第6話で追加されたこの伊勢湾台風のエピソードはその象徴だといえるし、ドラマの中でそれを宣言した場面だといってもよい。

 ロケットという夢や未来を目指す技術であっても、その根底には悲しみや後悔がある。逆に言えば、悲しみや後悔はいつか夢や未来を目指す技術になり得る。航平の言葉はそれを指し示しているのだし、そしてこの言葉は、桜田を再生させるものでもある。また、これから佃製作所が挑む人工弁という技術自体が再生を目指すものだから、これは第6話以降に通底するテーマでもある。

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