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『ソレダケ/that’s it』DVD&Blu-rayリリース記念レビュー

染谷将太、綾野剛ら旬のキャストが火花を散らす! 何度もループする特殊ドラマ『ソレダケ/that’s it』

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 裏社会を舞台にした『ソレダケ』は多重構造の物語だ。大黒の過去の記憶のフラッシュバックだったり、三途の川を渡る寸前の大黒が見た一瞬の夢でもあるわけだが、元々がユーレイのように死んでるのか生きているのか分からない存在だったので、大黒は死ぬことを恐れない。むしろ、死ぬ気で千手に立ち向かうことで、生の実感を手に入れていく。マトリョーシカのような多重構造の世界に閉じ込められていた大黒は、一線を越えた戦いを繰り返すことで、リアルな世界へと近づいていく。

 本作を撮り上げたのは、石井聰亙から2010年に改名した石井岳龍監督。おちこぼれの高校生が教師たちに叛逆する『高校大パニック』(76)での商業デビュー以降、閉塞感漂う邦画界を挑発するような問題作を発表し続けてきた。『狂い咲きサンダーロード』(80)では孤高の暴走族が組織を相手に抗争を挑み、『爆裂都市 BURST CITY』(82)では原発建設が進む街で虐げられている労働者たちが武装ポリスを相手に大暴動を起こした。変わらない日常に辟易している若者たちが体制に対して逆襲するドラマを、石井監督は撮り続けてきた。社会のヒエラルヒーに大きな風穴を空けようと無謀な戦いを挑む大黒の物語は、石井ワールドの真骨頂と言えるだろう。

 過剰な熱量を内包した本作の発火点は、ロックバンドbloodthirsty butchersを率いる吉村秀樹が石井監督に音楽と映画とのコラボレーションを持ち掛けてきたことだった。精肉工場に勤める染谷将太、渋川清彦、村上淳らはバンド演奏に憧れているが、ルーティンな日常生活からそう簡単には離脱することができずにいる。だが、ブッチャーズのライブに遭遇したことで、彼らのハートに火が点き、気が付いたときにはステージ上のブッチャーズと入れ替わり、熱い演奏を繰り広げていた―。そんなドラマとライブドキュメンタリーが融合した企画を石井監督は考え、キャストは楽器演奏の準備を進めていた。ところが、クランクイン直前の2013年5月27日に吉村が急逝。この企画は一度流れてしまう。

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