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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.365

願い事が呪いに変わる、もうひとつの“まどマギ”。オタク文化への偏愛と批評性『マジカル・ガール』

magicalgirl02不思議な力を持つ女・バルバラは危険を承知で“黒蜥蜴の館”へと向かう。バルバラの肉体には無数の傷跡が刻印されていた。

 もうすぐ娘を失うルイスの悲しみは、不思議な力を持つバルバラによって大きく増幅されていく。ルイスの悲しみはバルバラを通して、バルバラがかつて関わっていた裏社会の女アダ(エリザベト・ヘラベルト)、さらに少女時代のバルバラの不思議な力を目の当たりにした元教師ダミアン(ホセ・サクリスタン)へと繋がっていく。そして取り返しのつかない事態へと発展していく。ひとりの少女の祈りが、少女の知らない間にあまりにも掛け離れた、そして因果な結果を呼び寄せることになる。

 劇中歌として長山洋子の「春はSA-RA SA-RA」、エンディングに美輪明宏が作詞作曲した「黒蜥蜴の唄」が流れるなど、カルロス監督の日本文化に対する偏愛ぶりが溢れている。架空のアニメ『魔法少女ユキコ』は『美少女戦士セーラームーン』をイメージしたものだ。だが、日本のネイティブなオタクとは、異なる視点をカルロス監督は持っている。日本で活躍するアイドル少女たちを見ていると、今敏監督のアニメ映画『パーフェクトブルー』(97)のヒロインがそうだったように、笑顔の裏にたくさんの悲しみを隠しているようにカルロス監督は感じるそうだ。『魔法少女まどか☆マギカ』はもちろん観ている。『マジカル・ガール』は『まどか☆マギカ』のダークな世界観の影響を受けたものなのだ。『まどか☆マギカ』の少女たちが願い事と引き換えに大きな代償を支払うように、日本のアニメに憧れるアリシアもまたひとつの願い事を叶える代わりに大きな大きな犠牲を払うはめになる。

 ジャパニーズアニメーションの影響を多大に受けたスペイン映画『マジカル・ガール』は誰かの願いが他の誰かの呪いとなってしまうという、恐ろしく悲しい循環の物語だ。誰かひとりが物欲を満たせば、他の多くの人たちが肉体をすり減らすことになる。資本主義経済の縮図のようでもあるが、カルロス監督は劇中に幾つかの選択肢を用意し、必ずしもこの物語は悲劇で終わるとは限らないことを示唆している。

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