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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.367

成海璃子は初濡れ場でどこまでさらけ出したか? 痛みを伴う大人への通過儀礼を描いた『無伴奏』

mubanso01成海璃子主演作『無伴奏』。アジ演説、クラシック喫茶、回覧ノートといった1960年代ならではのユースカルチャーがオシャレに描かれていく。

成海璃子演じるヒロイン・響子は教室でいきなり学生服を脱ぎ始め、下着姿になる。制服廃止闘争委員会の委員長をつとめる響子は、同級生たちに向かってアジ演説を行なう。「我々女子高生はオシャレする権利と自由を取り戻すべきである!」「異議なし!」。映画『無伴奏』は1960年代終わりの、まだ学生運動が熱かった時代の仙台を舞台にした“痛い”青春ドラマだ。実際に女子高で制服廃止闘争委員会をやっていた直木賞作家・小池真理子の自伝的要素の強い同名小説を原作に、成海璃子が大人への階段を上がっていく響子役を等身大で演じている。初めて官能シーンに挑んだことでも話題の作品だ。

響子(成海璃子)はメンソール系のタバコをしばしば吸う。そうやって気分を落ち着かせていないと、体の中を駆け巡る血の気を抑えることができない。学生運動に参加している響子だが、本当は沖縄の基地問題にもベトナム戦争にもさほど興味はない。でも、何か他の人と違うことをせずにはいられないのだ。親や学校の言うことに従って、おとなしく受験勉強なんて出来やしない。近くの大学で開かれている決起集会に加わり、機動隊を相手に一触即発になる緊張感を味わっている。周囲から子ども扱いされるのが嫌で嫌で堪らないが、その反面では芯から学生運動にのめり込めない空虚さも感じていた。そんなとき、響子はクラシック喫茶「無伴奏」で育ちのよさげな大学生の渉(池松壮亮)と出会い、渉の親友・祐之介(斎藤工)やその恋人・エマ(遠藤新菜)と一緒に遊ぶようになる。響子は今まで知らなかった大人の扉を開けることに夢中になる。

矢崎仁司監督が描く『無伴奏』は、山下敦弘監督の『マイ・バック・ページ』(11)やトラン・アン・ユン監督の『ノルウェイの森』(10)とほぼ同時代の物語である。映画化された『マイ・バック・ページ』や『ノルウェイの森』は学生運動華やかなりし1960年代に対して一定の距離を置いて描かれていたのに対し、原作者・小池真理子の4歳年下になる矢崎監督はその時代にほんの少しの差で乗りそびれた世代ゆえに、憧れの念を込めて1960年代後半の世相を再現している。あの時代ならではの若者たちの熱気と苛立ちを、ノスタルジックなファッションとして成海璃子は身にまとう。あの時代の意識高い系女子が成海璃子にはよく似合う。『戦国自衛隊』(79)の千葉真一が戦乱の世にタイムスリップして目がギンギンに輝くように、成海璃子も60年代の喧噪の中に送り込まれ、とても自然にその時代に溶け込んでいく。

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