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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.367

成海璃子は初濡れ場でどこまでさらけ出したか? 痛みを伴う大人への通過儀礼を描いた『無伴奏』

mubanso02どこかミステリアスな雰囲気のある大学生の渉(池松壮亮)に、女子高に通う響子は魅了される。茶室で2人はいいムードに。

響子が渉と出会ったことで大人の階段を上がっていくように、成海璃子にとっても本作は大人の女優への通過儀礼的な作品となっている。響子は渉と初キス、そして初体験を済ませることになるが、その舞台となるのは竹林に囲まれた隠れ家のような一軒の茶室だ。渉と祐之介はその茶室で共同生活を送っており、エマもここに入り浸っている。遊びに呼ばれた響子は、茶室の小さな入口「にじり口」をくぐって茶室の中へと入る。茶室の入口である「にじり口」は異界へのエントランスだとされている。女子高育ちで性に関しては頭でっかち状態だった響子だが、そんな彼女の前で祐之介はエマを相手に激しいペッティングに耽る。胸をはだけたエマは股間を祐之介に愛撫され、目をとろんとさせ、甘い声を漏らす。狭い茶室いっぱいにエロ~い空気が立ち込める。その様子を見ていた渉と響子も唇を合わせることになる。60年代のビンテージもののエロスが生々しくスクリーンに再現される。

童顔の池松壮亮だが、濡れ場に関しては若手男優屈指のスペシャリストだ。『愛の渦』(14)では門脇麦、『海を感じる時』(14)では市川由衣、『紙の月』(14)では宮沢りえを相手に大胆なベッドシーンを演じた。子役からキャリアを重ねてきた成海璃子だが、官能シーンは今回が初めて。2歳年上の池松は頼もしい共演者だった。くだんの茶室で、今度は渉と響子が裸になって体と体を重ね合う。全裸になった2人の前にはコタツがあり、大事な部分だけカメラの死角になっている。コタツに見守られながら、響子は処女を喪失することに。だが、響子と渉が結ばれるのを見届けていたのは、コタツだけではなかった。薄暗い茶室の中を、小さな「にじり口」から祐之介がじっと見つめていた。祐之介の熱い眼差しに気づき、慌てふためく響子。ここから物語は、ノスタルジックな青春ドラマから妖しい恋愛ミステリーへと転調していく。

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