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NY在住マイノリティーの“あるある”を描くコメディ  『マスター・オブ・ゼロ』が高い評価を得た理由

【リアルサウンドより】

 『マスター・オブ・ゼロ』は、売れない役者のインド系アメリカ人が主人公のコメディー・ドラマだ。Netflixのオリジナル作品として去年11月に配信され、NYに住むマイノリティーの日常を描いた点などが人気を集めている。放送テレビ批評家協会賞の最優秀コメディー・シリーズや、アメリカ映画協会賞TVプログラム・オブ・ザ・イヤーに輝くなど、批評家たちからの評価も高い。本稿では、ここまで幅広い人気を得られた魅力について述べていく。

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 NYを舞台にしたドラマや映画といえば、『セックス・アンド・ザ・シティ』シリーズのように派手で華やかな生活が描かれた作品をイメージするかもしれない。しかし『マスター・オブ・ゼロ』は、何気ない日々の一コマを描いていく。このドラマのストーリーには、主人公のデフを演じるアジズ・アンサリの実体験が反映されており、それゆえ作り込みすぎたフィクションでは見られない親しみやすさを生みだせている。

 その親しみやすさの一例は、第1話「プランB」における一幕で見られる。子育てに励む友人に彼は、「遊んでた頃が恋しくないか?」と問いかける。だがその友人は、子どもとのエピソードを嬉しそうに披露したあと、「夜遊びはこの充実感の100万分の1にも満たない」と断言する。それを聞いた時の表情はどこか寂しそうに見えるが、こうした感情は多くの人が体験するものだと思う。このような“あるある”を、『マスター・オブ・ゼロ』は軽快なテンポの会話劇という形で浮き彫りにする。この軽快さを作りだせるのは、制作総指揮も務めるアジズ・アンサリがコメディアンということも関係しているだろう。ひとつひとつのセリフがシャレを効かせたものとなっており、ドラマに笑いをもたらしている。笑いがあることで、視聴者はヘヴィーな題材を楽しみながら受けとめられるのだ。

 また、マイノリティーが受けがちな差別を取りあげるのも『マスター・オブ・ゼロ』の特徴だ。それがもっとも明確に表れているのは、第4話「インド人・オン・TV」である。この話は、デフが差別的扱いを受けたことから物語が転がっていく。“インド人”にまとわりつくステレオタイプに戸惑うが、生活のためには仕事をしなければいけない。そんな葛藤を抱えてしまう。これだけでも考えさせられるが、すごいのは差別的扱いをした男が死んだときのシーン。役者仲間に「差別野郎が死んで俺たちの時代だ」とハイタッチを求められるが、「人が死んだんだ。ハイタッチはしない」と彼は言う。このやりとりには、その死を喜んでしまえばある基準に基づいて人の扱い方に差をつける差別者と変わらないのではないか? という良心が表れている。こうした深い描写が随所で見られるのも、『マスター・オブ・ゼロ』の魅力だ。

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