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テレビウォッチャー・てれびのスキマの「テレビ裏ガイド」第122回

実直な職業ドラマ『重版出来!』が描く、「前向き」になる方法

 勝手に売れる本などはない。自らアイデアを出し動く営業、協力的な担当編集者、作品を愛してくれて推してくれる書店員がそろった本は、大化けする可能性があるという。

「人をうらやんでいた頃はわからなかった。これが営業の仕事。これが僕の仕事なんだ!」

 意識が変われば、見える景色も変わってくる。たとえば、ドラマ上でそれは、営業部長が大事にしている「忍法帳」と呼ばれる手帳が象徴している。最初は「ただの手帳」と興味なさげに言っていた小泉が、やがてその手帳を「見せてほしい」と目を輝かせて言うようになるのだ。

 よく「前向きに生きなさい」と言われることがある。けれど、迷いの渦中にいる人にその言葉は届かない。なぜなら、どこが「前」なのかわからないからだ。けれど、受け身ではなく、能動的に行動をし始めると、とたんに目の前のことが「前」になる。自然と前向きになり、「自分の立っている場所」がわかるようになるのだ。

「俺たちが売っているのは『本』だが、相手にしているのは『人』だ。伝える努力を惜しむな」

と岡は言う。だからこれは出版業界を描いたドラマではあるが、どんな業界にも当てはまることだ。仕事とは、実直にコツコツと積み重ねていく作業だ。実直の果てに時には、劇的で奇跡のような成功があったりもする。

 まさにこのドラマは、そんな「仕事」によってできているのだ。

『重版出来!』には、決して派手なトラブルやドラマティックな展開はない。だが、地味だけど確かに意識が変わる瞬間のような、人の仕事への向き合い方が丁寧に飛躍なしに描かれている。だからこそ、このドラマを見ているとわが身を振り返り、もっと頑張ろうと前向きになれるのだ。
(文=てれびのスキマ <http://d.hatena.ne.jp/LittleBoy/>)

「テレビ裏ガイド」過去記事はこちらから

最終更新:2019/11/29 17:41
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