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『FAKE』公開記念ロングインタビュー

二極化する世界への違和感──『FAKE』森達也が“ゴーストライター”佐村河内守を撮ったワケ

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■佐村河内さんはチェックしていません

――映画の中で、森さんが佐村河内夫妻に向かって何度も「僕のことを信じていますか?」と言っていますが、あれはやはり信頼関係を築かないと、この映画は撮れないと思ったからですか?

 うーん……。信頼関係ってよくみんな言うけど、信頼関係なんてなくてもドキュメンタリーは撮れるんです。だって、『ゆきゆきて、神軍』の原一男さんと奥崎謙三に信頼関係があるかっていったら……

――ないでしょうね(笑)。

 それでも、あんなにスリリングなドキュメンタリーが成立する。みんな「被写体との信頼関係が前提」とか言うけど、僕は全然そう考えてないですね。

――じゃあ、なぜ「信じていますか」と、しつこく言ったんでしょうか?

 誘導や挑発かもしれないし、手練手管かもしれないし、でもどこかで本音かもしれない……。自分でもわからないですよ。さらに、その場面を映画の中で使っているということにも、何か意味があるのかもしれない。編集には、必ず意味はありますから。説明できるかどうかは別にして。

――映画の着地点はどこにしようと考えながら撮影していたんですか?

 撮り始めた頃は、全然想像つかなかったですね。多くのドラマだったら「ラストはこうしよう」と決めてから撮りだしますけど、ドキュメンタリーですから。まったく手探りで始めています。

――ある時点から、佐村河内夫妻のラブストーリーを撮ろうという意図を感じたんですが。

 うん、そういえばそうだ。ラブストーリーが撮りたかったんだと思いますよ、最初から。

――本当ですか?

 北村さんの誘導かもしれない。

――(笑)。ラスト近くに、森さんはいなくて、夫妻がお互いに撮影をし合っているという、いいシーンがありましたけど、あれはカメラを預けて撮ってもらったんですか?

 カメラを預けたんじゃなくて、2人が自主的にスマホで撮っていたんです。あの時期、もうどうにもこの映画を終わらせられそうになくて、僕は行き詰まっていた。だから、しばらく会いに行かなかったんです。でも、僕が行かない間に彼は、ある行動を起こしていた。何度か「来てください」っていう連絡は来てたんだけど、行く気がしなくて、ほったらかしにしていたんです。

 それで、しばらくぶりに行ったら、随分進行しちゃってて。その間の映像がないのはマズイなと思っていたら、奥さんがスマホで撮っていたというんで、それを使わせてもらったんです。

――そこで、落としどころが見つかったなというのはありましたか?

 そうですね。ひとつの終わりにはなるかもな、って感じはしましたね。

――ところでこの映画、佐村河内さんは内容のチェックをしているんですか?

 今の段階では、厳格にはしていません。音が聞こえないんだから、見てもわからないでしょ? まあ、簡易なテロップをつけたものは見てもらいましたけど。ただ撮影中から、「映画は監督のものなので、自分は何も言いません」とは言っていました。その覚悟はしてくれていたと思います。

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