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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.378

北九州監禁殺人事件、尼崎変死事件に似ている!! 恐怖と暴力による洗脳『クリーピー 偽りの隣人』

creepy02隣家に暮らす西野(香川照之)と長女の澪(藤野涼子)。西野の妻と長男は家に篭ったまま、姿をまるで見せない。

 一方、大学に勤める高倉を刑事の野上(東出昌大)が訪ね、6年前に日野市で起きた一家行方不明事件の再捜査に協力してほしいと頼んできた。長女の早紀(川口春奈)だけが生存しているこの迷宮入り事件を調べていくうちに高倉は、事件現場一帯の家の並び方が自分の新居周辺とひどく酷似していることに気づく。どうやら犯罪をやるのにうってつけの物件というものがあるらしい。高倉が事件の真相究明にのめり込んでいる間、高倉家とその周辺はおぞましい悪意による侵蝕が進行していた。

 原作を大胆にアレンジした黒沢監督が映画化する上で参考にしたのが、2002年に発覚した北九州監禁連続殺人事件、2011年に発覚した尼崎連続変死事件といった実在の猟奇殺人事件。どちらの事件も主犯者は自分が直接手を下すことなく、監禁状態に置いた被害者同士を殺し合わせている。身内同士を争わせ、しかも生き残ったほうに死体の処理まで命じている。「週刊文春」の連載記事の書籍化『殺人犯との対話』(文藝春秋)でこれらの事件が起きた監禁部屋の実態を知ると、猛烈な嘔吐感に襲われる。恐怖と暴力によって洗脳された人間は、監禁部屋から逃げる気力すら奪われ、支配者に命じられるまま否応なく殺人や死体処理まで実行してしまう。

 本作に登場するクリーピー(ぞっとする)な犯人もまた悪の天才であり、言葉巧みに善良な一家に近づき、甘い汁を絞れるだけ絞った挙げ句に警察の目に留まらぬように静かに立ち去り、次の獲物へと忍び寄っていく。原作ではシロアリ駆除の業者を装って犯人は一般家庭に上がり込み、多額の請求を押しつけながら徐々に懐柔していく手口が記されている。シロアリの被害と同じように、一見すると平和そうな家庭も知らない間に土台や柱を喰い尽くされ、気が付いたときにはすでに手遅れ状態となってしまう。

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