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週刊!タレント解体新書 第46回

古舘伊知郎に学ぶ、3つのしゃべりの極意 日本テレビ『おしゃれイズム』(6月12日放送)を徹底検証!

(2)鉄板のエピソードにつなげる

 おしゃべり上手な人は、必ず鉄板のエピソードをいくつも持っている。そして、そのエピソードを会話の流れの中で、さりげなく入れてくる巧みさがある。話をしながらたまたま思い出すのではなく、自分の中に鉄板のエピソードを隠し持っているのだ。『おしゃれイズム』で最後の『報道ステーション』での挨拶の話になった際、時間読みが大変だったのではないかと振られた古舘はこんな話をする。

<……そうすると、早口になっちゃったりするじゃないですか。『紅白歌合戦』の司会をやらさせていただいたときなんか、大変だったんですよ。たとえば五木ひろしさんで、あの演歌の素晴らしいあの曲のイントロが28秒ある。28秒で、俺の大好きなあの前説イントロづけ。「常に演歌の王道を歩んでまいりました、五木ひろし。いま歌いますのは、あの二十年前の……」ってやりたいわけですよ>

 このあとも紅白の裏話がしばらく続くのだが、当然のように興味深いし、面白い。このエピソードを古舘は、ちゃんと持っているのだ。そもそも、このときの流れはあくまでも『報道ステーション』の最後の挨拶に対しての質問なのだが、時間読みという共通項から、この隠し持ったエピソードを取り出している。話をしながら自分の面白い話を偶然思い出すことができる天才は、ほとんどいない。だが、自分ができる鉄板のエピソードをいくつも鍛え上げ、場合に応じてそれを取り出すというのは努力でできる。人は努力で、おしゃべり上手になることは可能なのだ。

(3)他人から聞いた話を忘れない

 他人から聞いた話を忘れないというのは、特に対人でのおしゃべりにおいては重要だ。自分が昔した話を相手が覚えているというのはそれだけでうれしいし、自分が特別な存在であるという気にさせてくれる。『おしゃれイズム』では、女性を口説くという話の流れで、古舘はこうしゃべり始める。

<前、『おしゃれカンケイ』だったかな? 上田さんが来てくれたときに、口説くときにわざとなんだかめっちゃめちゃキザなことを耳元でささやく。そうするとキザすぎて、バカみたいって笑ってほぐれて、そこから口説き始めるっていうのを聞いて。耳元で、花束のこと言うの、なんでしたっけ?>

 この記憶力ったらない。一人のゲストのこんな些細なトークを覚えているのだ。おそらく本人でも、そんな話をしたことを忘れているだろうが、相手がそれを覚えていると知ったら、少し感動さえ覚えるだろう。もちろん、すべての人のすべての話を記憶するというのは無理があるが、重要な相手と話した際はメモに取っておいて、あとで思い出すなどしてもよい。きっとその人にとって、あなたは特別な人として認識されるだろう。

【検証結果】
 古舘伊知郎がバラエティに帰ってきた。まずはそのことを喜びたい。そしてもちろん、今後が楽しみで仕方ない。12年間の報道経験は、現在のバラエティとどんな化学反応を起こすのだろうか? 『報道ステーション』での最後の挨拶で、古舘は「つるんつるんの無難な言葉で固めた番組など、ちっとも面白くありません!」と叫んだ。ほとんどほえるように。宣戦布告である。その過激な才能は、間違いなく、テレビの新しい景色を見せてくれることだろう。
(文=相沢直)

◆「タレント解体新書」過去記事はこちらから◆

●あいざわ・すなお
1980年生まれ。構成作家、ライター。活動歴は構成作家として『テレバイダー』(TOKYO MX)、『モンキーパーマ』(tvkほか)、「水道橋博士のメルマ旬報『みっつ数えろ』連載」など。プロデューサーとして『ホワイトボードTV』『バカリズム THE MOVIE』(TOKYO MX)など。
Twitterアカウントは @aizawaaa

最終更新:2016/06/20 11:11
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