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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.380

綾野剛×白石和彌の実録犯罪エンターテイメント!!『日本で一番悪い奴ら』とはいったい誰なのか?

 

nichiwaru02北海道警「銃器対策室」のみなさん。1995年に国松警察庁長官狙撃事件が起きたことから、ますます予算が増えていった。

 銃器対策室の上司たちにとって、諸星は欠かせない人材だった。面倒見のいい諸星は、地元暴力団の幹部・黒岩(中村獅童)、ヤクの売人兼DJの太郎(YOUNG DAIS)、盗難車ブローカーであるパキスタン人のラシード(植野行雄)らをエスとして抱え、裏社会の顔役に収まっていた。諸星に頼めば、すぐに拳銃を用意してくれた。銃検挙の実績を残すことで、道警の銃器対策室は予算を大幅に増やすことができた。銃がないときは、太郎やラシードがロシアまで出向いて銃を密輸した。だが、公務員の給料だけでは銃を購入する資金やエスたちに渡す小遣いに困るようになり、仕方なく諸星は覚醒剤をさばき始める。現役刑事である諸星の車やマンションは警察に調べられることがないので、裏ビジネスをやるには好都合だった。覚醒剤の収益で銃を仕入れ、自分たちでその銃を摘発し、度々表彰された。ブラックジョークとしか言いようがない行為が、道警の日常風景となっていた。

 思い込んだら一直線の男・諸星を演じた綾野剛はハマリ役。『新宿スワン』(15)の風俗スカウトマン、『天空の蜂』(15)の心優しいテロリスト、『リップヴァンウィンクルの花嫁』(16)のお調子ものの便利屋など、単純に善悪に二分することができないグレーゾーンの人間を演じることで、妙なフェロモンを発する男優だ。上司の考えたシナリオに従って、諸星は100丁以上の銃を集め、銃器対策室のエースに祭り上げられる。すべては道警のため、強いては道民のため。監督に命じられるままに、どんな役にでも成り切ってみせる“役者バカ”と本作の主人公はとてもよく似ている。綾野剛は白石監督や本作のため、強いては映画界のために劇中でアンモラルな行為にのめり込んでいく。実際の稲葉事件は2名の自殺者を出した陰惨なものだが、白石監督の演出のもと、この事件の中心にいた諸星を綾野剛は全力で演じ切り、犯罪青春映画と称すべき不思議な高揚感を作品に与えている。

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