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“善人夫婦”は、どう壊れていくか……『はじめまして、愛しています。』の残酷な世界

 その後も堂本は、チクチクと夫婦の「話したくないこと」ばかりを聞いてきます。

 夫婦はともに片親で、信ちゃんはアル中の母に、美奈ちゃんは父親の愛人に育てられました。そして2人とも大人になった今、その遺された親との関係がよくありません。一見、子どもがいないだけの“普通の家庭”に見えた梅田家でしたが、“普通の家庭”で育った人間は、この家にはいないのでした。

 そうした人間が里親に向いているのかどうか、おそらく堂本には経験上、ひとつの推論が働いているように見えます。だからまるで、信ちゃんと美奈ちゃんの関係を破壊し、再構築しようとしているかのようです。知らない子と「本当の家族になる」ためには、まずは夫婦が「本当の家族」かどうかを試す必要があるということでしょう。養子を取るために必要な覚悟が、リアリティをもって描かれていきます。

 児相によるテストが終わり、夫婦は都の児童福祉審議会で「里親認定」の審議を受けることになりました。その結果を待つ間、2人は「あの子に会いたい」と施設を訪ねます。施設の職員も堂本も「話しかけても無駄だ」「あの子は何も答えない」とあきらめムードですが、男の子は美奈ちゃんをしっかりと見つめ、立ち上がるのでした。男の子にとっても、2人が他の大人とは違う特別な存在であることが明らかになりました。

 まるで家族のように手をつなぎ合って動物園に向かった3人でしたが、ここで男の子が迷子になってしまいました。園内放送をかけようにも、男の子には名前がありません。必死で探す中、また2人は、面接で互いに打ち明けた過去について言い争いになります。美奈ちゃんは「やっぱりやめよう、養子なんか。こんなんじゃ無理だよ、あの子を育てるなんて」「あの子がうちにきたのも、ただの思い込み」とまで言い出してしまいました。

 そこに現れたのが、またピアノでした。広場にあったピアノを係員さんに頼み込んで弾かせてもらうと、男の子が引き寄せられてくるのでした。

 また手をつないで、3人は施設に戻ります。来るときは信ちゃんから強引につないだ手でしたが、帰るときには、手を差し伸べようとする信ちゃんを、美奈ちゃんが制しました。

「そっちから、ちゃんと手をつなぎなさい」
「この人はあんたを裏切らない。そんな人の手は絶対離しちゃダメ」

 美奈ちゃんの脳裏に、手を離してしまった母が海に入っていくシーンがよぎるのでした。

 信ちゃんと美奈ちゃんは里親認定を受け、里親になる資格があると登録されました。今後は、里親委託という形で、男の子と同居することになります。

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