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ノンフィクション作家・石井光太が迫る、虐待家庭の闇『「鬼畜」の家~わが子を殺す親たち~』

「子供達は相変わらず面会で見ての通り元気だけど、皆パパが大好きだから、いないのは寂しいんだよ。でも、私がこんなんだから、ああやって元気にふるまってんだ…どんなに小さくても皆が、分かってる。パパがいないとママはダメになっちゃうって(中略)。1人で5人は、とっても大変…やっぱ、パパがいて7人揃ってウチは仲良し家族だよ!!」

 実際、石井氏があるルートから手に入れた彼らの家族写真を見ると、Vサインをしたり、笑顔で頬と頬をくっつけたりしている、仲睦まじい家族写真ばかりだった。にもかかわらず、残忍な虐待によって次男を殺し、「埋葬」をするため、“長男と長女とともに”山梨県へと向かうなど、正常な頭では考えられないような行動も起こす。この矛盾が、どうして起きてしまうのか? その点について石井氏は、彼らの過去をできる限りさかのぼることで、丹念に追っている。

 最後まで読み終え、思わず深いため息が出た。彼らは、本気で子どもたちを愛していたのかもしれない。だが、あくまで彼らなりに。どの事件も、まったく罪のない子どもが亡くなっているだけに、軽々しく同情はできない。けれど、幼い頃に身につけた感覚というのは、おそらく一生消えない。一体何がどうなったら、このような残酷な事件が起きるのか――。その背景を、この本で知ってもらいたい。
(文=上浦未来)

●いしい・こうた
1977年、東京生まれ。国内外を舞台にしたノンフィクションを中心に、児童書、小説など幅広く執筆活動を行っている。主な著書に『物乞う仏陀』(文藝春秋)、『神の棄てた裸体-イスラームの夜を歩く』『レンタルチャイルド-神に弄ばれる貧しき子供たち』『遺体-震災、津波の果てに』『浮浪児1945-戦争が生んだ子供たち』(新潮社)、『絶対貧困-世界最貧民の目線』(光文社)、『地を這う祈り』(徳間書店)ほか、児童書に『ぼくたちは なぜ、学校へ行くのか。―マララ・ユスフザイさんの国連演説から考える』(ポプラ社)、『幸せとまずしさの教室―世界の子どものくらしから』(少年写真新聞社)、小説『蛍の森』(新潮社)、責任編集『ノンフィクション新世紀』(河出書房新社)などがある。

最終更新:2016/08/18 21:00
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