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フリースタイルバトルブームの“台風の目” ブラジル人ラッパーACEが語る、「エミネムの壁」と「果てなき野望」

378A2987撮影=尾藤能暢

『フリースタイルダンジョン』(以下、FSD/テレビ朝日系)をきっかけに、いまや空前の盛り上がりを見せているフリースタイルバトル。その半面、浮かれてばかりもいられない。というのも、「さんぴんCAMP」が着火剤となり、「Grateful days / DragonAsh feat,zeebra&ACO」が大ヒットして一躍注目を浴びた日本語ラップシーンだが、その後、セールス的にメジャーシーンで成功したといえるのは、KICK THE CAN CREW、KREVA、RIP SLYMEくらいだった(参考記事:月刊サイゾー『フリースタイルダンジョン』に至る30年のウラ側)。もちろん、THA BLUE HERBなど、インディーズながら成功を収めたアーティストもいるが、日本語ラップがメジャーシーンで日の目を見ることは少なくなっていった。

 そんな時代を経て、久々に何かやってくれそうなラッパーが現れた。渋谷サイファー(註:路上や公園などに集まり、輪になってフリースタイルでラップし合うこと)という新たなカルチャーを確立した、ブラジル生まれ新宿育ちのラッパー・ACEである。アニメとASIAN KUNG-FU GENERATIONをこよなく愛し、「もっとテレビに出たい」と声高に叫ぶ、これまでにいないタイプのラッパーが、現在の日本語ラップシーンをどのように見ているか、話を聞いた。

***

――ACEさんは、般若さんから『FSD』への出演を依頼されるきっかけとなった「アドレナリン」をはじめ、クラブイベントを主催されていますが、その中でなぜ、渋谷サイファーを始めようと思ったんですか?

ACE もともとは、高田馬場でやってたんです。当時、フリースタイルバトルで勝ちまくるというのを目標にしていたこともあって、練習の場としてもそうだし、単純にサイファーは楽しい。でも、サイファーやってるやつは少ないから、“じゃあ、ゲリラでやろう”と思って、たまに渋谷のハチ公前とかでもやってたんです。それで、ひょんなことからスピーカーとマイクを入手して。ある時、「高校生ラップ選手権」の前夜祭サイファーをやっていたんですけど、遅い時間だったんで一回解散して、TSUTAYA前に移動して大人の部をやることにしたんです。そこに偶然、ドラムのユージ・レルレ・カワグチさんがいて、その音を聞いていたらビートが合いそうだなと思ったんで、なんなら一緒にやっちゃおうと(笑)。スピーカー置いて、ドーンってやったら、化学反応が起きたんです。路上ライブスタイルのサイファーってこれまでなかったから、新しいなって。もうね、TSUTAYA前がフェス状態でしたからね。これはヤバイと思って、「掌幻、お前も味わったほうがいいぞ! ラップうまくなるぞ。来いよ」って誘って、今の掌幻がある(笑)。そこからCHARLESとかギターのユースケ・ローレンスも加わり、今の渋谷サイファーの形になりました。最近では、トランペットやサックスから、ディジュリドゥ(アボリジニの管楽器)まで、いろいろな楽器が飛び入りで入ってきたり、ダンサーもいたり、みんな自由にやってますよ。

――渋谷でやることの意義って、何かあるんですか?

ACE 僕の家から近いから(笑)。もちろん、一緒にやってるやつらには、それぞれ思い入れはあると思います。でも、北海道でも沖縄でも、どこでだってやりますよ。最近は『FSD』の影響もあって、サイファーをやっていれば足を止めて見てくれる人もいますけど、僕らがサイファーを始めた頃って、今ほどHIP HOPに日が当たっていなかった。当時は「黒人が日本語でラップしてる」くらいの関心度で、人も集まらないし、内々のものだったんです。

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