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ベテラン海外ドラマライター・幕田千宏の「すごドラ!」

ディープ・サウスだから成立!? カオスすぎるヴァンパイアドラマ『トゥルーブラッド』

 ドラマはファンタジーでありながら、一貫して差別問題などの現代アメリカの社会問題を人間とヴァンパイア(と、その他の異生物)に置き換え、鋭く切り込んでいる。人間たちの露骨なヴァンパイア差別も当たり前のように描かれているが、これがロサンゼルスやニューヨークのようなリベラルな都会だったら、そうはいかない。都会であればあるほど、レイシストと呼ばれることを嫌悪し、たとえそういう気持ちがあっても、表向きは隠そうとする。狭い世界で完結してしまうような小さな田舎町でなければ、この物語は成立しないのだ。その狭い世界で、想像も及ばないようなディープな世界が繰り広げられているのが、このドラマの妙だといえる。

 もっとも、ドラマとしてはあくまでエンタテイメント。差別問題や宗教問題も出てくるが、「社会問題を考える」という小難しさはない。そして、ヴァンパイアドラマといえば、美男美女ぞろいなのがお約束。おまけに、このドラマは大人向けということで、毎回ふんだんにエロシーンが盛り込まれているのもポイント。特に基本、スーキーがフラフラしている(相手はいつも人間じゃないが)上、その兄・ジェイソンはヤルことばかり考えているボンクラ、ヴァンパイアはその魔性でもって人を魅了するので、エロありグロありの濃密ドラマが展開される。

その濃密ドラマを繰り広げる脇役キャラクターも、これまたこってり濃厚。フェロモンダダ漏れのもう一人のヴァンパイア、エリック、常に怒りを抱えながら、どこか乙女なスーキーの親友タラ、タラの従兄弟でゲイのラファイエット、登場人物の中では一番平凡でまっとうそうに見えて、とんでもない秘密を持っていたマーロッテのオーナー、サムといったレギュラーだけでなく、シリーズ途中から登場する狼男のアルシード、さらに町の保安官アンディやスーキーのウエイトレス仲間アーリーン、新興宗教の教祖スティーブと、主要キャラからサブキャラまで、とにかく誰も彼もがひとクセもふたクセもある濃ゆいキャラ。そんなキャラクターが織り成す人間(?)ドラマが面白くないわけなく、彼らの行く末がどうなるのか、難しいことなどなーんにも考えなくてもどっぷりハマれること必至だ。

★このドラマにハマった人におすすめ!
『ヴァンパイア・ダイアリーズ』
『オリジナルズ』
『Being Human/ビーイング・ヒューマン』

●まくた・ちひろ
映画・海外ドラマライター。『日経エンタテインメント!海外ドラマSpecial』『ゲーム・オブ・スローンズ パーフェクト・ガイド』(日経BP社)、『海外ドラマTVガイド WATCH』(東京ニュース通信社)、『映画秘宝EXドラマ秘宝vol.2~マニアのための特濃ドラマガイド』(洋泉社)等に寄稿。Twitterアカウントは@charumin

最終更新:2016/11/18 12:55
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